Summary
経済産業省も推進を勧めるデジタルトランスフォーメーション。大手企業とスタートアップ企業の協業という形での実証実験等が盛んになってきましたが、DXを推進するには企業規模や業界に依存しない協力関係やエコシステムが必要です。この講演ではさまざまなスタートアップと積極的な協業を推進している住友商事の荒川様から具体的な事例を紹介いただきつつ、モビリティ業界のDXについてお話いただきました。
スピーカーの自己紹介
荒川一橋大学商学部卒業。2011年に住友商事に入社し、一貫して自動車関連ビジネスに従事。国内における自動車リース法人営業を担当した後、SmartDriveをはじめとするモビリティ関連スタートアップへの出資および提携を進め、国内最大手の自動車リース会社におけるモビリティサービスの開発を担当。2019年からは全社のDigital Transformation(DX)を推進する専門組織に所属し、社内外のパートナーと連携しながら、現場の課題に即したDXを展開しております。本日はよろしくお願いいたします。
石川大学を卒業後、人材系のベンチャー企業にてキャリアをスタートし、CRM、MA、DMP、BIなどの最新のテクノロジーの導入利活用を推進してきました。スマートドライブではMobility Data Scientistとして、移動データや移動データに関連の深い周辺領域のデータの分析を担当しています。本日はどうぞよろしくお願いします。
住友商事がDXに力を入れる理由
石川それでは早速、荒川様から住友商事がモビリティ業界のDXに取り組むようになった背景についてご解説いただきます。
荒川最初にモビリティの環境変化についてご説明させていただきます。
自動車業界問わず、所有から利用へと人々の価値観が変わってきています。それに伴い、過去には1人に1台、一家に1台、車を所有していたところから、シェアリングという概念が浸透し、徐々に買い手が個人からフリート・オーナーへと移ってきました。
また、今までの自動車業界は自動車メーカーやディストリビューター(卸)が中心でしたが、今後はサービス提供者がメインの事業へと変わり、プロフィットプールも徐々にサービス側へと移行するのではないかと。課金形態に至っては、元々は所有の概念がありましたので、基本的には1台あたりいくらと考えられていましたが、今後は使った分だけ課金するのが一般的になると考えております。
そうした変化が起きている最中、住友商事が考えるモビリティサービスとは一体どんなものか。
少し概念的にはなりますが、私たちは走った分だけ、走った時間だけ課金する、新たなサービスの提供を検討しています。そして、それを実際に提供するモビリティサービスプロバイダーは、自動車などの資産を持ちながら、稼働のリスクを取っていける事業者であると。使った分だけ課金するサービスですので、逆を言えば未稼働の状態ではお金をいただくことができません。私たちとしては、稼働率を最大化しながら収益を最大化していくことで、新たな事業を生み出そうとしているのです。
その際にポイントの1つになるのが、「プラットフォーム×パートナー or テック=モビリティサービスプロバイダー」という考え方です。プラットフォームというのは、広い事業基盤を有しているかどうか。私たちの場合、住友三井オートサービスという国内法人市場最大手の自動車リースを提供している会社があります。国内外のグループで法人企業を中心に約100万台のリース車両を提供しており、お客様も4万社ほどいらっしゃる。同社のように全国に拠点を構え、日本中に車を走らせることが可能なプラットフォームを新たなモビリティサービスの基盤とし、スマートドライブ社のようなデータ解析に強い新しい技術を持つパートナーと組むことで、新たなサービス開発を進めていきたいと考えております。
モビリティという観点では、自動車単体で物事を考えるのはそろそろ限界に近いのではないかと感じておりまして。モビリティ+ヘルスケア、リテール、その他多様な分野と組み合わせながら、スマートシティやまちづくりの一環として、モビリティサービスを開発していくべきだと考えています。それに、サービスとして確実に収益を上げていくには、モビリティサービス単体ではなかなか難しい。弊社のグループにはヘルスケアやリテール、金融、通信に強みを持つ企業がありますので、グループのシナジーを発揮させながら、まちづくりサービスの一環としてモビリティサービスの開発を進めています。
こうした中で、私たちがどのようにデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)を進めているのか、少し内部組織の紹介になってしまいますがざっと解説させてください。最左列は弊社の大きな部門の割り方を示したものです。商材別に金属、輸送機・建機、インフラなど6部門ございます。2018年から、私が所属しているDXセンターを中心として社内を横串組織に変え、それぞれの部門ないしは事業会社が抱える課題やペインポイントに対して、デジタルトランスフォーメーションを加速しております。
商社がDXを本当に実行できるのかと疑問に感じる方もいるかもしれませんが、現在はデータサイエンティストなどの技術者を内製化する、また、グループ会社で大手SIerのSCSKから十数名ほどこちら側の組織に来てもらうなど、さまざまなケイパビリティを集めてDXを推進している段階です。それに、スマートシティの実現には、モビリティもインフラも、不動産も、さまざまな要素が関係するため、部門や組織を越えた取り組みが必要となりますから、従来のような、縦割り、個々の部門だけでは足りない部分が出てきてしまう。そのため、横串で組織を構築することが重要なのです。
こうした取り組みの一環で、スマートドライブ社のような優れた技術を持つスタートアップとも協業し、具体的なモビリティサービスの開発をしているところです。
SmartDriveが描くMobility DX
石川ありがとうございます。私からは、スマートドライブが描くモビリティDXについてお話しさせていただければと。スマートドライブは、IoTセンサーデバイスから取得できる移動データに加えて事故情報、整備履歴、リース料金など、移動にまつわるさまざまなデータを弊社のプラットフォームに集約したうえで、自社サービスを展開したり、協業パートナーにデータを活用いただいたりしております。
こちらの資料では、ターゲットとしている市場とそこに対して提供できる価値を整理してまとめました。1つが車両管理と言われるテレマティクス市場。その外にはモビリティDX市場、モビリティ資産およびリスク管理市場が続きます。
車両管理市場:
こちらの市場で提供できる価値は、安全運転促進による事故対応のコスト削減、事故の削減、労務管理の効率化、働き方改革など。具体的にはドライバーがきちんと法令を順守しているかモニタリングしたり、車両維持管理費用を最適化するためにデータ分析をさせていただいたり、営業生産性を向上させるために走行データを活用した最適な配車や人員配置を提案したりしています。
モビリティDX市場:
例えば自動車メーカーさんに向けたコネクテッドサービスの構築支援本日別のセッションでお話しされるホンダ様の二輪テレマティクスサービスでも、スマートドライブのプラットフォームをご利用いただきました。自動車ディーラーに対しては、販売した車両がどのように動いてどれくらい稼働しているかをデータで取得し、販売後もお客様との接点を増やすCRM施策を支援させていただりもしております。リース会社様向けにも同じように、リース車両の稼働率などを見てアップセルの提案につなげるためのデータ分析などを行っています。
モビリティ資産およびリスク管理市場:
保険会社様と一緒に新商品を開発したり、リース会社が車両の稼働率を見える化し、お客様にアップセルやクロスセルの提案ができたりするようなサービスを提供できるようにお手伝いしています。
石川ここからさらに、弊社が考えるDXについて詳しく解説していきましょう。
まず、DXには非常に多くの解釈の仕方がありますので、経済産業省が発表しているDX推進ガイドラインをここで読み上げさせていただきます。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。
この文言だけでは意味が分かりづらいですよね。スマートドライブでは、この内容は大きく次のようなステップに集約されると解釈しました。
シンプルにデータを集めること。そのデータを分析可能な場所へ集約し、土台となる基礎解析をかけます。最終段階はサービス化、新規ビジネスの創出、自動化などによるオペレーション工数の削減などによって価値を生み出す。このような3ステップです。少し抽象的になりますが、モビリティ業界にこのステップをあてはめたものがこちらです。
一部でデータ収集は始まっていますが、第2ステップの複数種類のデータが統合された分析環境の構築はまだ進んでいません。実際にあらゆる実証実験が行われていますが、そのほとんどが構想の段階で、未来の話として終わっている。それが現在のモビリティ業界におけるDXの状況です。
こちらは弊社のビジネスモデルを紹介する図ですが、上記とほぼ同じ構造であると思っていまして。データインプット、データプラットフォーム、データアウトプットの3領域でビジネスを展開しています。データを収集するデバイスだけでなく、プラットフォームの中に基礎解析をかけた状態でアクセス可能データを蓄積し、収集したデータはさらにサービスへと変換しています。さらに、さまざまなAPIを介してテクノロジーパートナーにこのプラットフォームを使っていただけるように構築しています。スマートドライブは自社の強みを活かしつつ、モビリティ業界のDX、デジタルトランスフォーメーションに必要なアセットをほぼすべて有している企業だと思っております。
直近ですと、1stPartyデータの分析基盤構築支援をサービスとしてスタートいたしました。1stPartyデータとは、自社内に蓄積されている売上や顧客データのこと。弊社のプラットフォームに蓄積された移動データを、Mobility DWH(モビリティデータウェアハウス)という分析基盤に載せて、自由に使っていただけるようにしました。簡単に言うと、アクセス可能な複数種類のデータを、一つの環境に統合するサービスです。このサービスにデータが統合されるようになると、データ活用や分析ができるようになります。
弊社は、BIベンダーのLookerとアライアンス契約を結び、テクノロジーパートナーになりました。そのため、お客様の方で構築しているBIがない場合は、Lookerをご提供させていただくことがあります。このようなケイパビリティによって、モビリティに関わる企業さまのDXを推進していければと考えております。
さて、ここまでにひと息つく間もなく話してきましたが、質問がたくさん届いていますので、いくつかピックアップしながら回答していきましょう。データ活用について、こんな質問が届いていますね。
質問交通事故、渋滞などの不確実性に関するリスク管理が住友商事さんの付加価値になるのでしょうか。
荒川交通事故に関するリスク管理は、弊社やグループ会社でフリート管理をしている住友三井オートサービスも非常に力を入れているところです。安全に車をお使いいただくために、私たちも安全運転管理に注力していますし、そこに対する対価として収益を頂戴してきました。安全運転管理のレポーティングについては今後も非常に重要になっていきますし、今後も力を注いでいくべき領域だと認識しております。
質問住友商事さんとしては、モビリティサービス開発を進められていると思いますが、商社だからこそ提供できるコアとなる価値はどのようなものがあるとお考えでしょうか。
荒川これは回答が非常に(難しい)…。私自身が現ポジションで感じていることは、DXで重要なことはデジタル技術というよりも、現場の課題の本質は何かを突き止める「課題発見力」なんじゃないかと。また、それを発見したら実行するための力が必要です。手前味噌になってしまいますが、従来から商流や新規事業の開発として課題発見力をベースにしてきましたので、その点においてはコアな強みの1つとして発揮できる部分があると考えています。
石川ご回答ありがとうございました。もう一つ、気になる質問がありましたので答えさせていただければと思います。
質問コスト削減に繋がる提案はビジネスとして提案しやすいですが、価値創出、モビリティの新たな楽しさの醸成のような提案はこのご時世、難しいですよね。
石川確かに、難しいといえば難しいですね。…ですが、これこそまさしくスマートドライブが今後、注力していく領域でもあります。
弊社では、BtoBtoCという形でドライバーエンゲージメントサービスを提供しています。これは安全運転をすればポイントが貯まるというものですが、ドライバーに向けて新たな移動体験をしていただくことを前提にサービスを構築していますので、ただ移動するだけではなく、移動する時間がよりエンターテイメントに近くなるような、楽しさを醸成できる事業をパートナー企業と共に今後展開していければと思っています。
オンデマンドバス実証実験の事例
石川ここからは、昨年8月に住友商事様とスマートドライブで取り組んだ、オンデマンドバスの実証実験の事例をご紹介させていただきます。まずは荒川さん、実証実験の概要や実施の背景をご説明いただけますか?
荒川この実証実験は、先ほど申し上げたモビリティサービスプロバイダーになっていくことを前提に実施したものです。COVID-19以前の話ですので今とは状況が異なりますが、今後、オンデマンドバスサービスが必要になると考え、弊社の従業員を対象に利用率がどれくらいか、収益性はどの程度見込めるのか、シミュレーションを行いました。具体的には、本社がある大手町周辺にバーチャルなバス停を数十拠点構え、従業員がアプリを通じて必要なときにバスを配車するという流れです。
石川ありがとうございます。私からは実証実験のスキームについて解説させていただきます。
先ほど説明したDXの3つのステップに合わせて整理したものがこちらです。
住友商事様が車両を、弊社は走行データが取得できるデバイスをそれぞれ提供し、予約管理には3rdPartyベンダーが作成した管理アプリを利用しました。それらをベースに走行データや管理アプリの予約ログを取得し、先ほど紹介したDWHにデータを統合。最終的には、エンドユーザーに向けてオンデマンドバスサービスを提供したり、分析レポートを作ったりする。このような内容のプロジェクトを住友商事様と合同で実施させていただきました。
では、オンデマンドバスを走らせた結果、どのようなインサイトが得られたのか。公開できる範囲でお話しさせていただきます。
実数は掲載できませんのでご了承ください。左を見ますと積み上げ棒グラフがたくさん並んでいます。これはユーザーのセグメントを表しており、色が濃いのがロイヤルユーザー、つまり利用頻度が高いユーザーを示しています。つまり、縦の積み上げの割合は、イコール予約数に対するユーザーの割合です。このグラフからは、予約の8割がロイヤルユーザーで占められていることがインサイトとして得られました。これは“売上の8割は2割のユーザーから作られる”というパレートの法則とほぼ全く同じような状況だと言えるでしょう。
次に、右のグラフが表しているのは、オンデマンドバスの台数の変化です。この実証実験ではオンデマンドバスの台数を変動させ、台数を変えれば数字がどのように変わるのかをABテスト的に検証しました。ですから、時間によって12台で走る、5台で走るなど台数はバラバラ。この赤い線は予約成功率を表しており、「台数が多いほうが予約成功率は高い」という仮説通りの結果となりました。
オンデマンドバスを走らせる際、とくにキーとなるファクターが相乗り率です。1度の走行でより多くの方に相乗りしてもらえるほど収益性が高くなりますから。
左下の図は使用されているバーチャルバス停の数の推移を表したもの。日を追うごとに少しずつバス停が増えていることがわかりますね。また、上の図は相乗り組数、相乗り率を指し、バス停が増えるほど相乗り率が下がっています。バス停が増えればユーザーの選択肢も同じように増えていくので、一バス停あたりに相乗りする率が低くなるのです。
右側の地図は、バーチャルバス停をマッピングしたもの。そのうち左の地図は出発地からの時間の長短を表し、赤が平均よりも迎えに行くまでの時間が長く、青は平均よりも短くなります。つまり、赤は遠くまで迎えに行かなければユーザーを乗せることができないということ。右の地図は、相乗り走行履歴があるバス停を茶、相乗りがほぼ発生しないものを黄で表しました。このように地図上で可視化すると、赤と黄は、迎えに行くのに時間がかかるうえ、相乗り率が低いということがわかります。
バス停を増やしても相乗り率は下がるだけで、相乗りされるバス停は限られている。最終的に、茶のバス停しか相乗りされていないというインサイトが得られました。このようにして、住友商事様とともに適正な台数と適正なバス停の数をシミュレーションする実証実験を実施させていただきました。
荒川最適なバス停の設置場所や走行台数がわかれば、今後、街のバス停も変わっていきそうですよね。
石川そうですね。すでに、ある企業の走行データを分析させていただき、オンデマンド化が可能かどうか分析したり、オンデマンドバスのバス停をどこに設置するかを一緒に決めたり、具体的な話がいくつか進んでいます。
では、ここでいくつか質問に答えていければと思いますが、なかなか興味深い質問が届いていますね。
質問かなり未来を見据えた今のお話しですけれども、本日ご紹介いただいている内容は、COVID-19前からの取り組みだと思います。この状況の中、今新たに思うこと、考えていることはありますでしょうか。
石川荒川さん、いかがでしょう?
荒川おっしゃる通り、この取り組みはCOVID-19前に行ったものですので、今の環境下において乗り合いバスが受け入れられるかどうかと聞かれると、回答に詰まるところがあります。
今後はモビリティの在り方も、都市の規模や公共交通機関の発展性に応じて、大きく変わっていくのではないでしょうか。たとえば、東京のように公共交通機関が発達して、シェアリングの拠点数も多いところは、より一層、利用の概念でシェアリングが浸透していくかもしれませんし、地方へ行けばまだまだ自動車が公共交通インフラとしての役目も果たしているところがあるので、自動車のあり方は今までと変わらないかもしれない。地域によって、アフターコロナの世界における最適なモビリティの在り方が変わるのではないかと思っています。
石川このご時世ですので、おそらく個人で車両を持っていてもほぼ使うことがないでしょうから、所有から利用への流れが急加速していきそうですね。自家用車を手放して、カーシェアやオンデマンド乗り合いバスを利用するというように。最近の事例で、走行データを活用し、社員の通勤時に乗り合い化するものもありますし、このようなシェアリングサービスはますます加速していくでしょう。また、こんな面白い質問もきていますね。
質問東京や田舎は極端で想像しやすいのですが、地方都市などの中間規模のような街で、どのレベルが最適になるかちょっと難しいと思います。
石川なるほど。地方だと、モビリティ系のサービスがほとんど普及していませんし、自家用車がなければどこにも行けないという人も少なくありません。そこは都市と大きく異なる部分ですよね。ただ、自家用車を持っていても週に1度しか使わない人も結構いるんですね。ですから、そういう個人の車両の稼働率を可視化して、隣り合っている個宅どうし、一台をシェアした方が互いにメリットがあるというような提案もできると思っています。根本的な概念は、都市と地方で大きく変わるものではありませんが、目先の課題感として、地方は都会のようにモビリティサービスが整っていませんので、地方から先にシェアリングサービスが普及していくことも考えられるでしょう。
まとめ
石川そろそろ本セッションも終わりに近づいてまいりましたので、まとめのコメントを述べさせていただきます。
データの利活用に関しては、先ほどお見せしたピラミッドの真ん中、データ統合・分析処理の階層がどうしても抜け落ちやすい。データの利活用は、分散して保存されているデータを一つの基盤にまとめたうえで、個々のデータの意味合いを解釈できる専門家がいなければ、「データがあるだけで何もできません」という状況に陥ってしまいます。そのため、データを統合し、誰もが見ることが可能なデータとして保存するべきだと考えております。また、モビリティ業界のDXは、単一企業で実現できるものではありません。他業界や企業規模の垣根を超えた協業を行うことで、やっと意味のあるサービス、意味のあるDXが実現するのです。
大手企業のケイパビリティとベンチャー企業の先端技術を組み合わせれば、スピード感を維持しながら社会実装に繋がる実証実験が可能になります。今回ご紹介したオンデマンドバスの実証実験も、住友商事様のご協力を得ることで実現できましたし、スマートドライブが強みとするデータ分析やデータ統合の技術を生かすことで、次に繋がるようなインサイトが得られたと思っております。このように、企業規模を問わない協業によって、意義や価値がある実証実験ができると思っております。荒川さんからは、何かございますか?
荒川こういう業界でのゲームチェンジは、一企業ではできないことです。それはどの業界も同じだでしょうから、私たちとしてはパートナリング、共創を通じて、一歩一歩、世の中を変えていくお手伝いができればと。今回はスマートドライブ社との事例紹介をさせていただきましたが、スマートドライブも弊社もそれぞれ魅力的なパートナー企業を常に募集中です、ということだけ補足させていただきます。
石川荒川さんが先ほどの質問で回答されていましたが、技術力を高めていく、取り入れていくだけではなく、DXの推進には課題発見力こそが本質だという言葉が印象に残りました。
弊社も全く同じ意見です。最近ではそもそもどういう課題に対してデータを取得しているのか、どんな施策を実施するためにこのデータが必要なのかというプロセスを経ないままデータだけを蓄積し、「データは溜まり始めているが、どうしたらいいか分からない」という企業様も多くいらっしゃいます。データを有効活用するには、課題ドリブンと技術ドリブンを両立できなくてはなりません。課題に即したデータを必要な量だけ集めて、それを解析したうえで顧客価値につながるサービスが創出できる。そこがまさしく弊社の強みでもあります。そして、これが最後の質問になります。
質問どういう順番で、デジタルトランスフォーメーションを推進していくのかというプランありますか。
石川まずは小さくスピーディーに試すことです。その際に、最低限、検証したい項目が何かを明確にしてください。たとえば、この検証をするにはこのデータが必要だ、と逆算で考えていきましょう。必要なデータが蓄積されたら、専門家が分析する。つまり、事前の設計さえしっかりされていれば、実行することは案外シンプルだったりするんですよね。
こういう項目が検証したいからこのデータを集めました。そのデータをこのように分析すれば、結果が3パターンに分かれることが想定できる。パターン1だったら、このような意思決定をする……というような事前の整理が重要です。第一ステップはデータを集める前に整理をする。その次のステップでデータを一つに集め、そこから分析を行い、具体的な施策を検討していきましょう。お時間がきてしまいましたので、ここで一旦終了とさせていただきます。
住友商事の荒川様、ご参加いただいたみなさま、本日はありがとうございました!