今必要なのはMaaSではなくDaaSだ!–Mobility DataPlatformを活用したプロダクト開発事例(後編)

今必要なのはMaaSではなくDaaSだ!–Mobility DataPlatformを活用したプロダクト開発事例(後編)

昨今、モビリティ業界で話題になっているMaaSやCASE。そこでは自動運転車の走行やシームレスな移動などが浸透し、利便性と効率性の高い世界を描かれていますが、まだまだ先の未来の話に聞こえるでしょう。そこに対し、DaaSは実現性と実用性が高く、さらには地方の社会問題を解決するサービスとして注目されるかもしれない。
後編では、代行業界を明るい未来へと導くためにさまざまなサービスを開発している株式会社Alpaca.Labの代表取締役である棚原さまに、スマートドライブのサービスでどのように開発を進めているのか、代行サービスで実現したいことを伺いました。

Mobility Data Platformの活用を決めたのは…

--スマートドライブでは、自社のモビリティデータをお客様のサービス構築に組み込んだり、利活用いただいたりできる「Mobility Data Platform」を提供しています。

今回、サービス開発時にSmartDriveの「Mobility Data Platform」をご利用いただいたことでプロダクトの完成イメージを掴むことができたと伺っていまが、どのように活用されたのでしょうか?

私たちが描いていた最初のビジネスモデルの実証と、AI開発におけるデータ収集のために活用させていただきました。

スタートアップはスピード感が命でもありますから、迅速にビジネスモデルの正当性を確認するためにも、位置を特定してマッチングする必要がありましたし、AIの開発には、代行業者がいつ・どのように稼働しているのか、詳細な走行データが必要でした。しかし、私たち自身で開発したシステムでは、20km走行すると200mの誤差が出るというように、なかなか正確なデータが取得できなかったのです。誤差は料金設定に関わる大事な部分でもあるので、ここを早急に改善しなければならなかったし、何よりAIのベースとなるデータと考えると、この誤差が許せなかった。とにかく、精度が高い正確なデータが欲しかったのです。これらの問題を解決してくれたのがスマートドライブでした。

--ありがとうございます。スタートアップはスピードが大事とのことですが、そもそも、スタートアップは開発を急ぐべき、と考える理由はなんでしょう?

技術的にできることも、このようなマッチングサービスの先駆者も、世の中に目を向けるとごまんといます。スタートアップとは、人を集めながら攻める角度をゼロから模索していくものであり、結果的に成功を左右するのはビジネスモデルだと思うんです。

だからこそ、最初のビジネスモデルを検証することが急務でした。一般的には検証が終わった段階で資金調達をしますが、私たちの場合はシードラウンドでより多くの資金調達をしようとしていましたので、ビジネスモデルの正当性をスピーディに検証する必要があったのです。しかしながら、自分たちで一から作るのは非常にハードルが高い。ですから、確度を高めるためにも、すでに実績あるサービスを使用したほうが確実かつスピーディに進めると思いました。

スマートドライブから学んだ多くのこと

―スマートドライブと連携して開発を進めたきっかけについてお聞かせください。

目の前にタイムリミットがあったことが一番の理由です。1月中でのリリースが決まっていたのに、正確なGPSの位置情報が取得できないという技術的なハードルにぶつかってしまって。その問題をいち早く解決したかったので、時間というより技術面に頼ったところが大きかったと思います。GPSのズレがほぼなく、精度が圧倒的に高かった。なんて素晴らしい技術を持っているんだと感動しました。

―スマートドライブのノウハウや技術の中でとくに参考になった点は?

数えきれないほどありますが、車両管理システムの機能に関してはとくに学ぶことが多くありました。また、当初からエンジニアとの付き合い方などマネジメントに関しても相談させて頂いていましたし、担当してくださった岩瀬さんの営業スタイルも非常に参考になりましたね。

また、スマートドライブの価格設定がどのようにして現在の形式になったのかを教えていただいたり、「どのように会社の中でレイアウトして管理しているのか」「どういうシステムをつかって開発しているのか」を聞かせていただいたり。ITベンチャーがアプリを開発する際に必要なものを、マネジメントから開発環境に至るまで本当に幅広く勉強させていただきました。

弊社のエンジニアも、外部の新しいサービスを開発している人たちと話せて嬉しかったみたいです。相談前は開発中のサービスが、どれだけのシステム規模ならば耐えられるのかわからなくて。話し合いを通して、私たちが何回このAPIを叩けばいいのか理解できるようになりましたし、スマートドライブ社の金額設定を参考にしながら、ビジネスとして成り立たせるにはいくらに設定すべきかを学ぶことができました。開発を進めなければ金額感がはっきりとは見えてきませんが、スマートドライブのエンジニアさんと交流させてもらうことで、ユーザー数を想定しながら、どれくらいのコストが発生するのか、初めて把握することができました。

―MaaSやスマートシティなどのトレンドを掲げ、モビリティ業界に新たなサービスが続々と生まれようとしています。モビリティ関連の新たなサービスを開発するにあたり、何かアドバイスはございますか?

最近では、新型コロナの影響もあってデリバリー関連の需要が増え、それに付随するサービスも増えてきましたよね。今後も成長していくと見込んでいます。

先日、スマートドライブのスタッフ10数名とお話した際に、「さまざまな業界で広く利用されるモビリティサービスを提供したい」とおっしゃっていましたが、それが実現できる仕組みが整っていけば、スマートドライブのサービスがモビリティ事業を始める人たちの最初のきっかけになるのではないでしょうか。まだまだ無限の可能性を秘めていますから。

ハードウェアの形にとらわれず、あらゆる移動を正確かつワンストップで提供できるようになるでしょう。そうすれば、ある企業がサービス開発にあたって人やモノの移動をトラッキングしたいと考えたとき、「モビリティならばスマートドライブだ」という発想につながるはずです。

私たちが本当に助かったのは、スマートドライブの営業の方が柔軟にスピード感と条件を合わせて進めてくれたところです。通常、フリートの話になるとスタートアップ企業は審査要件ではねられてしまいますし。私たちのように小規模なスタートアップでも、親身になって話を聞いてくださり、柔軟かつ丁寧な対応をしてくれる。それは本当に企業として価値が高いですよ。

運転代行は地方の課題を解決できる

―御社のサービスが広く利用されるようになれば、一般の消費者の方がどんなメリットを受け、どのような生活へと変わって行くでしょうか?

今までとは比べものにならないほど、代行が使いやすくなり、代行が発展することで地域に根ざしたインフラになることができると考えています。高齢者を始め、みんなが暮らしやすく移動しやすい社会を実現できる、地域の社会的課題を解決するリソースになってほしいですね。

―代行が過疎地域の荷物を運んだり、買い物代行をしたり、できることはたくさんありますね。

今までの代行はリソースを確保し、事業性を持って継続的に運用することができていませんでした。過疎地域はそもそも人がいないし、注文も無い。そうした地域で代行業として生計を立てたい人がいたら、そのリソースを活用するべきなんです。ここ数年、自動運転車を走らせたり、ドローンを飛ばしたりすることで過疎地域の移動を解決しようという話がありますが、それで過疎地域の人たちが助かる絵が私には描きづらい。新規事業として立ち上げず、代行業者がその業務を担うことで具体性は高まるでしょう。

以前、モビリティ推進協会の方たちが代行業者の将来について「これ、DaaSだよね」と言ってくれたんです。”代行 as a service”。代行というインフラを使った複数のサービスが、人とモノをデザインできる唯一の手段になるという評価を受けました。私たちとしても、このビジョンは間違っていないと考えています。

―たとえば、集落に1人だけ少し若い人がいるとします。その方が代行業として集落全体の買い物やモノを運ぶイメージですか?

そうですね。本来は法的な制約が多くあり、今期間限定で国からの許可を取らなくてはなりませんが、代行には厳しい決まりがない。それをヒントに沖縄で実証をはじめて、手軽に安く、合法的に代行とモノを運ぶことができることがわかりました。

代行の利用が増えれば、社会的インパクトとして、飲酒運転も減らすことができる。実際にあるんです、飲酒運転の要因で「代行が来なかったから」というのが。簡単かつ適切に利用できるサービスがあれば、飲酒運転の問題を大幅に減らすことができるでしょう。しかもそれが実現できるのは代行だけ。そのインパクトに大きな価値があるのです。代行が持つインパクト、これから代行が作り出すDaaSとしての価値。MaaSは夢物語のような世界観ですが、DaaSは確実に地域の課題を解決できる、実現性が高いものです。

―今後、御社が目指していきたいことは?

運転代行業界のもつポテンシャルを最大限発揮できるようにするのがAlpaca.Labの目指すところ。モビリティサービスのインフラとして、代行は唯一の世の中を変える手段だと思っています。

運転代行は今後、UberEetsのように“働きたいときに働いたい人だけが働く”世界が主になると考えていて。UberEetsは、リソースを確保するために宣伝したり、人を採用したりしていますが、私たちはすでにプラットフォームを構築しているので、人を採用するだけ。その可能性を評価していますし、最初に乗り込めるリソースを持つAlpaca.Labは、これからますます面白くなりますよと、声を大にして言いたい。

今は新型コロナの影響もあって、会社も転換期を迎えています。今までは「運転代行業界の未来をかえるAlpaca.Labの代行サービス」でしたが、代行の持つポテンシャルを大きく変えることができると自負しています。

私たちは資金調達とエンジニアの採用を続けていますので、ぜひ興味がある方はご連絡ください!!

https//alpacalab.jp/

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