国土交通省の資料によると、日本全国で年間に発生する渋滞による損失は時間にすると38.1億人時間、貨幣価値換算すると約12兆円にもなるそうです。渋滞はなぜ起きるのか、減少させるために国や事業社はどのような取り組みや対策方法を行っているのでしょうか。
渋滞の発生原因は一般道路と高速道路で全然違う!?
一般道路と高速道路。それぞれの渋滞が発生する原因はなんでしょうか。
一般道路の渋滞
一般道には交差点があり、大きな交差点になると必ずと言っていいほど信号機が置かれています。
青信号の時間は自動車の通行量によって場所ごとに調整されてはいますが、交差する道路の通行量がどちらも多いと、通過台数に見合うだけの時間が確保できないために交差点を先頭に渋滞が発生してしまいます。加えてその道路に右折レーンや左折レーンが用意されていないと、交差点で曲がろうとする車が後続の進行を妨げてしまうため、より渋滞を発生させやすくしてしまうのです。
高速道路の渋滞
NEXCO東日本が管轄エリア内で発生した渋滞について調べたデータによると、渋滞の発生原因で一番多いのは、車が同じ場所に集中することで発生する「交通集中渋滞」で、全体の75%を占めているそうです。そして、この交通集中渋滞のなかにもいくつかのケースがあります。
トンネル部が約3%、インターチェンジが約11%、接続道路からの渋滞が約19%、上り坂およびサグ部(※サグとは、下り坂から上り坂にさしかかる凹部のことです)においては約62%と、一般道では交差点付近で渋滞が発生しているのに対し、高速道路では「上り坂」と「サグ部」で多くの渋滞が発生しているようです。
高速道路で渋滞が発生する仕組み
では、高速道路の渋滞はどのようにして発生するのでしょうか?
トンネル部
トンネルに入ろうとするときに、入り口の暗がりや圧迫感によってドライバーが一時的に速度を低下させて後続車との車間距離が縮まり、さらに後ろの車が連鎖的にブレーキを踏むことで渋滞が発生するようです。
インターチェンジ
流入車がランプから低速で合流する際に後続車が速度を落とし、走行車線の流れが停滞することで渋滞が発生します。さらに走行車線が詰まったことで今まで走行車線を走っていた車が追い越し車線へ車線変更をすると、同じ要領で追い越し車線でも渋滞が発生してしまいます。
接続道路からの渋滞&料金所部
料金所の先にある一般道の交差点や接続道路が渋滞していることで、その影響が高速道路の本線までおよんでしまいます。ETCの普及率が上がったことで、料金所そのものが渋滞の原因となることはほとんどなくなりました。
上り坂およびサグ部
そして発生場所として断トツのトップだった、上り坂とサグ部。繰り返しになりますが、「サグ部」とは、下り坂から上り坂にさしかかる凹部のことをいいます。
上り坂でもサグ部でも、坂を上ろうとするときに一部のドライバーが知らず知らずのうちにブレーキをかけています。すると手前の車との車間距離が縮むことで後続車もブレーキを踏み、それが連鎖的に続いて渋滞が発生してしまうのです。
トンネル部やインターチェンジの合流地点でも、これと同じ現象が発生しているわけなのですが、このように減速が連鎖することによって起きる渋滞のことは「自然渋滞」と呼ばれています。
渋滞を減少させるための取り組みと対策
では渋滞を減らすために、具体的にどのようなことをすればいいのでしょうか?国や事業社が行っている渋滞緩和への取り組みと、ドライバーでもできる対策方法は?
渋滞に対する国や事業者の取り組み
道路構造の改良
交通量の多い交差点を立体交差に変えたり、高速道路に付加車線を設置して車がスムーズに通行できるようにしています。
渋滞予測情報の提供
カーナビやスマホアプリを通して、渋滞が予想される道路の情報をドライバーに提供しています。
ETCの整備
日本国内のETC利用率は、2016年7月現在で90.6%となっています(国土交通省調べ)。今後も普及は拡大されていく予定です。
LED表示板などによる呼びかけ
これはNEXCOが全国的に行っている取り組みで、上り坂やサグ部で発生する自然渋滞を防止するために、ドライバーに速度向上を意識させるための表示板を道路脇に設置しています。
2009年に東日本(東北道羽生PA付近)中日本(中央道相模湖IC付近)西日本(九州道広川IC)の各地で検証を行ったところ、いずれの場所でも交通容量が増加して付近の渋滞量が減少したそうです。
ドライバーができる対策は
これから一般道や高速道路を走る際にドライバーは以下のようなことに注意してみると良いでしょう。
なるべく空いている時間に走る
自分の利用するルートの混雑状況を把握し、いつもより早い時間、または遅い時間に家を出て渋滞を回避するという方法があります。単純な回避方法ではありますが、このタイミング次第で渋滞に巻き込まれることを避けられるのです。
上り坂でも同じ速度で走る
上り坂に差し掛かるときに減速しないようにすれば、自然渋滞の発生を未然に防ぐことができます。
十分な車間距離をとり、車線変更を控える
高速道路で自然渋滞が発生するかどうかの車間距離のボーダーラインは、40メートルといわれています。走行中に余計なブレーキを踏まなくて済むように、高速道路では十分な車間距離を確保しましょう。
また、高速道路の自然渋滞は、速度の速い追い越し車線ほど発生しやすいといわれています。無駄な車線変更を避けて、後続車にできるだけ減速をさせないようにしましょう。
目指したいのは「渋滞のない国」
渋滞について調査する「渋滞学」にはまだまだ研究の余地があるため、一般道路や高速道路の渋滞は今後さらに緩和されていく可能性がありそうです。
また最近では自動で走行する自動運転車が注目を集めていますが、上り坂やサグ部でも減速をすることがなく運転が安定しているため、普及すれば高速道路の渋滞を緩和してくれるとも言われています。
渋滞緩和への取り組みを進めていると同時に、ドライバーが渋滞の仕組みを理解し意識的に渋滞対策をしていけば、いつか「渋滞するのが珍しい」と言われる世の中がやってくるかもしれません。