[動態管理] IoTを活用した物流の可視化と業務効率化

[動態管理] IoTを活用した物流の可視化と業務効率化

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弘中 丈巳
CRO
株式会社スマートドライブ

[本記事は2020年10月29日に開催されたセミナー「物流現場で求められるデジタル変革とは?」の登壇レポートです]

パスコ、モノフル、スマートドライブの3社が共催セミナー。これまでパスコ様による「配車計画」、モノフル様の「バース管理」についてそれぞれ紹介をしました。そして、最後の今回の記事ではスマートドライブ の動態管理について紹介します。

株式会社スマートドライブの弘中です。本日はよろしくお願いいたします。私からはIoTを活用した物流の可視化と業務効率化についてお話させていただきます。簡単に自己紹介をさせて頂くと、私自身はモビリティの業界にずっといたという訳ではなく、どちらかと言うとIT側の会社にいることが多かったです。ですのでITの仕組みを使って、どのようにモビリティを変えていけるのか、移動データとして取得できる走行データというものをどういう使い方をすればビジネス的な価値が出てくるのか、そういった部分を今日はお伝えできればと思っています。

スマートドライブについて

スマートドライブは「移動の進化を後押しする」をビジョンに掲げ、モビリティデータを収集したあとの利活用をどのように実現するか、また我々一社では解決できないような課題を今日一緒にご登壇させて頂いているパスコ様やモノフル様と一緒にどういった形で実現していくと一番皆様にとって価値があるか、といったことを考えている会社になります。

我々の特徴としてあるのが、創業当初からモビリティデータというものに特化して事業推進をしているところです。設立当初は自身でデータを取得するデバイスも持っておりませんでしたので、移動データを頂いてそのデータを分析するというところをメインで行っておりました。ただ、移動データを分析するにも、簡単にデータが取れなければなかなかプロジェクトのスピードが上がってこなかったり、我々社内にも移動データ分析の知見が貯まりにくいという事情があり、モビリティデータを取得するためのデバイスとサービスの開発を2016年から行っております。

現状では既に地球7~8周分の移動データを収集しておりまして、活用が本格的に進むフェーズになってきております。ですので、直近はこれらのデータ解析というところをメインで実施しております。ビジネスモデルはデータのインプット、アウトプット、プラットフォームと3つの領域で展開しています。

データのインプット:私たちが提供しているシガーソケット型のデバイスの他にも、ドライブレコーダや温度センサといった外部センサ、コネクテッドモビリティ(車やバイク)からも直接データを収集しています。

プラットフォーム:インプットによって各所から集まったデータを蓄積し、ここで他システムとの連携といった話をさせて頂いております。後ほどモノフル様とどういったシステム連携をしてどのような価値提供をしているかといったお話をさせていただきます。

データのアウトプット:上記の通り移動データが蓄積されてきておりますので、この移動データをもとにして「この領域であれば確実にお客様に価値が届けられそう」といったものは自社でサービス提供をしております。現在は、BtoBのクラウド車両管理システム「SmartDrive Feet」、BtoCの運転見守りサービス「SmartDrive Families」、BtoBtoC/Eのドライバーエンゲージメントサービス「SmartDrive Cars」、そして移動データを収集するMobility Data Platformの4つを提供しています。

モビリティデータとは

我々が収集しているモビリティデータがどういうものかについてお話させていただきます。まずデータの収集について。こちらは非常に簡単です。我々の開発したデバイスを車のシガーソケットに挿していただくだけでデータの収集というのが完了します。

我々もよくお客様にお伝えしているのは「開始3秒でデータ収集がスタートできます」ということ。これはシガーソケット型のデバイスですので、例えば昨年事故を起してしまった方だけに安全運転をより提供していきたいといった場合に、その方たちだけにデバイスを挿し、安全運転になってきたらまた別の方にデバイスを挿してもらう、といった柔軟な運用が可能になります。

我々がこのデバイスを通して収集しているデータは2つ。車両の動態データと走行データです。車両の動態データというのはいわゆる加速度センサーのデータです。車のどこに重力がかかっているのかという情報から、急加速・急減速・急ハンドリングといった車の運転特性を判断しています。車両の走行データとは、いつ車両が動き出していつ止まったか、その距離、時間、急操作の回数、アイドリング時間などのことです。

実際にお客様へ提供しているSmartDrive Fleetの画面を見ていただくと、地図上に「走行開始」とかいてある部分からスタートし、終了マークのところで「走行終了」し、この場所では〇時に急加速している。こういったことが一目で分かるようになっています。また、我々はシガーソケット型の他にドライブレコーダーも持っているので、そちらをご利用の場合は、どの場所で録画を検知しました、というようなデータも収集されるようになります。

IoTを活用することのメリット

続いて、今回のテーマである「IoTを活用することのメリット」についてお話させていただきます。

人間が手作業で実施していたことの自動化・効率化

いままで業務が終わってからの業務日報作成が手書きだったり事務所に戻ってエクセルに書いたりされていた場合、どの場所にいって滞在時間がどれくらいだったかという基本的な情報は自動化されます。ですので、ドライバーの方が書くのは簡単な追記事項や申し送り事項みたいなものをスマートフォンから入力するくらいで、日々の日報が出来てしまいます。つまり、人がやらなければいけない作業というのは、大幅に削減できるのではないか、と考えております。

手作業で実施していたことが自動化されるということは、ドライバーや実際に業務をする方にとって、非常に重要なメリットです。SmartDrive Fleetの中でお客様から非常にご好評頂いている機能の一つも、日報の自動化です。今までは業務日報に「何時~何時まで、どのお客様に訪問していました」という情報を、紙やエクセルに記載しなければならなかったものが、IoTデバイスを車につけているだけで、車が止まった位置情報を自動で取得し、どのお客様に訪問していたかを自動で入力してくれるようになります。

何かメモ情報を残したい場合も、最近ではスマートフォンの音声入力などを利用して、その場で今日のメモを入力し、すぐ次の現場に向かえる。これはIoTの大きなメリットではないでしょうか。

人では取れない細かく正確なデータが収集可能

安全運転の研修で言うと、「自動車学校に行って研修を受けよう」「安全運転の試験を受けよう」といったことがあると思うのですが、実態と乖離があるケースも多いのではないでしょうか。IoTデバイスを活用することで、細かなデータが取れるようになり、その方の本当の運転の特性というものを見極めるということができるようになります。

またIoTのデバイスは常時付けることになりますので、”あるタイミングでは良かった”ということが無くなるのもメリットです。よくあるのが研修を受けて1週間くらいは皆さん安全運転を意識されてるのですが、その後1,2か月経ったときに少し気が抜けてしまって危険運転の傾向が強くなってしまう、というもの。そういった変化にきちんと対応できるというのもこうしたIoTのデバイスを使う良い点だと思います。

IoTを活用しているお客様事例

IoTを活用する事例として、お客様事例を紹介させていただきます。

事例①:アナタコとの併用活用

こちらの企業様は、もともとアナタコをご利用頂いていた企業様の例になります。

課題感としては、協力会社様の車両活用をされていたのですが、なかなか運行情報を正しく把握することができず、デジタコを導入するべきかと考えていたものの、デジタコ導入には工事が必要で協力会社さまとのやり取りが大変でること、かつ費用も大がかりになってしまうというものでした。そこで我々のSmartDrive Fleetをご利用頂いております。クラウド型のデジタコと比べてもシガーソケット型の「挿すだけで完了してしまう」という、導入が容易である点と、費用に関しても3年間の動態コストでもおおよそで年間10~15万円の削減になることが分かり、我々のソリューションを使っていただき、サービス品質を向上されました。

事例②:配送ドライバーの人員最適化

こちらは物流企業様に対してコンサルティングサービスを提供している企業様と一緒に、「どういうことをすれば生産性が高まってくるのか」という課題を解決した例になります。

こちらでは日報の情報もうまく活用しまして、ドライバー様一人あたりの作業時間の平均値や、1日にどのくらい訪問できているかといった訪問回数のデータ、こういったものを可視化していきながら、どうすると皆さんの残業が減るのか等をシミュレーションしていきました。また、もう一つこちらで重要な視点として、安全運転をする中で急加速・急減速・急ハンドル・アイドリングを減らしていくと、燃費も改善が改善されるという点です。うまく安全運転をしていきながら燃費を改善していくことで運用コストを下げていく、ということも同時に実現されています。

作業時間の平均や訪問時間の見直しと同時に、ルートの見直しも行っていらっしゃるのですが、そういったことを重ねることにより、それまで12人必要で回っていたところが、恐らく9人で実施できるのではないかという仮説を立てることができました。現在はこの仮説検証を回しているという段階になります。

またこちらは参考情報になるのですが、配送先以外でどのくらい車両がアイドリングをしているかというデータも当然収集できます。ですので、「このドライバーの方は荷待ち時間がものすごく多い」「ある場所での滞在時間が長いな」という情報も収集できるようになってきます。この企業様では、一番滞在時間が長くなっているのは本社の事務所のところでして、日報や報告書、納品書などを提出するのに事務所の前で待っている、というようなことが散見されていました。ですのでこうしたデータを用いて本社事務所に「皆さんこれだけ本社の前で時間を無駄にされているので、ここのオペレーションはもう少し改善したほうがいい」という提案をされたり、日報も電子化されれば提出する必要が無くなるので、このあたりの時間の削減をしていきましょうというお話をさせていただいております。

また、現在の配送ルート取得と、そのルートを元にしたルート最適化、ルート最適をした前後の比較によりどのくらい稼働率がかわったのか、といったことも分析させて頂いております。

事例③:荷主/大型スーパーの事例

こちらは首都圏に大型日用品スーパーを複数展開している荷主様でして、事業を伸長されている中で、協力会社様の車両台数がどんどんと増えていったのですが、はたしてどのように増やしていくと最も費用対効果が高いのか、そこの検証が難しかったというところと、配送計画・配車計画はうまく立てられるものの、その後の実績との紐づけ、本当に立てた配送計画がベストだったかどうか、ここが把握できなかったというので、我々のサービスをご利用頂いております。

こちらは当時どのようなオペレーションを回していたかというと、まず配送計画は”秘伝のタレ”のように、ずっと昔から使っているエクセルをそのまま加工してコピーして使っていました。ですので、なかなかこの配送計画を他の人にお願いするというのが難しかったですし、このエクセルの表を編集することも難しくなってしまっているので、今までの延長線上でずっと配送の計画を立てていました。

次に、計画を立てた後の動態情報は取得していなかったため、管理するためにはドライバー様が書かれる日報の情報を確認したりですとか、「今この人に連絡したい」と思ったときに、移動中なのか休憩中なのかの判断が出来ない、ということも発生していました。また、配送結果の実績管理は紙の日報でしたので、データも蓄積されないですし、この情報をしっかり集計しようとするとものすごく時間がかかってしまう。

配車の最適化をする場合にも、データが蓄積されていませんでしたので、長年の勘と経験から「恐らくこの物流でこの配送件数だったら〇台で行けるだろう」という属人的な形で行われていた、というのはこの企業様の当時の課題感でございます。

こちらに対して、我々の動態管理と、本日ご一緒させていただいているモノフル様と一緒に、「着タイム」を共同で開発してご提供させて頂きました。この着タイムを導入してどう変わるかというと、これは配車計画を立てていただいたときに、そのドライバーさんの位置情報からその方が到着するであろう時間を計算させ、本来の到着予定時刻に遅延するような場合は先にスーパーや配送先に連絡をしてくれるというサービスです。

これをすることで運転中のドライバー様が「何時にどこに行ってちょっと遅れそうだから連絡しなきゃ、そのためにはどこかで一時停車しなきゃ」というような問題を解決すると同時に、受入れ側のスーパーの方に対して「この車少し到着が遅れそうなので他の業務をやっていよう」ですとか、全体の業務効率というものを提供できるようになりました。

ですので全体の構成としてどうなったかと申しますと、配車計画はモノフル様で配車計画を立てられて、動態管理の部分はSmartDrive Fleetと着タイムとを使っていき、配車計画に対する実績管理と遅延の自動通知を実現しております。その後の実績管理・配車の最適化については、我々の方で実績管理をさせていただいて、そのデータを元に分析をして、配車の最適化をご提供しているというものがこちらの例になります。

スマートドライブが手掛ける分析サンプル

次に、我々がどういう分析をさせていただくことが多いかという点について、1つだけ例をご説明できればと思います。我々がモビリティデータを使って分析できる観点では、「売上増加」「コスト削減」「CSR推進」がございます。このCSRの中でもエコドライブの例をご紹介します。ここでは我々の方で運転データを収集し、CO2の排出量をシミュレーションしています。

どのくらい急ブレーキが減るとCO2の排出量が減るのかという観点もそうですし、最近ですとEV車両の導入も増えてきていますので、何台EV車両に切り替えると、どのくらいCO2の排出量を削減できるか、CO2エミッションに貢献できるかみたいなものをシミュレーションし、一緒に脱炭素ですとかSDGsのように「地球環境を一緒に考えて行きましょう」というようなテーマで分析をさせて頂いております。

我々スマートドライブがこういったことが出来る理由には、我々が創業からモビリティデータの活用というものをすごく意識して組織やシステムをつくっているというところがあると思っております。掛け合せる走行データとしては、営業情報やマーケティングデータ、人事情報、交通関連情報、あとはドライバーの生体情報や観光情報、住民情報などが多く、こういったものを掛け合せることで、新しい価値提供というのをさせて頂いております。

物流文脈の例で言いますと、顧客データ、配車データ、集荷データ、といったものを掛け合せることによって、ご説明させていただいた着タイムのような自動アラートや、他にも配車のマッチングの仕組み、バース管理との連携といったところでの簡単呼び出しや実績管理、そうった部分のご提供もできるかなと思っております。

データを活用するために

最後に、データを活用するために重要だと思っているポイントだけ簡単にお伝えさせていただきます。

データを活用していくためには、データを収集して加工、成形、分析して初めてインサイトを取得するという流れになっていきます。当然、インサイト取得がもっとも価値が大きいものです。ですが実際の業務を考えると、データを集めることや加工することに非常に多くの時間がかかっているというが実態だと思っております。ですので我々スマートドライブはデータの収集~加工というところを一気通貫で実施してしまい、事業自体をデジタル化するというのと、ビジネスプロセスをデジタル化するというところを中心にご支援しております。

これは最近ではDXと言われる領域ですが、AI、BigDATA、Customer Experiene、Design Thinking、こういった部分をご支援することによって、IoTをつかって物流企業様の皆様のDXをご支援させて頂いております。

私からの講演は以上となります。ご清聴ありがとうございました。

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