業績絶好調!?キント(KINTO)の今にせまる

業績絶好調!?キント(KINTO)の今にせまる

新型コロナ感染拡大防止のため、マスク着用や手洗いの敢行などと共に不要不急の外出自粛が求められ、コロナ禍以前より自宅で過ごす時間が大幅に増えたという方も多いのではないでしょうか。

外出を控える巣ごもりによって、飲食店やレジャー施設が苦境に立たされている中、自宅にいたまま動画や音楽を好きな時に好きなだけ視聴できる、「Netflix」や「Hulu」などサブスクリプション方式(以下サブスク))の配信サービスが売り上げを伸ばしています。今やサブスクは食料品や洋服・家電のみならず、自動車業界にも浸透しています。自動車最大手企業のトヨタでは、2019年3月より、新車を月々定額で利用できる「キント(KINTO)」というサ―ビスをリリースし、好調な業績を記録中です。

今回は、話題沸騰中のKINTOのサービス概要から、会員数が急増している理由について考察しました。

キント(KINTO)とは?

「購入でもシェアでもない、もっと気軽な新しいクルマの持ち方。」というキャッチコピーのKINTOとは、定額料金を支払うことで新車利用権を一定期間得られるサービスです。

KINTOには、トヨタ車を取り扱う「KINTOONE」とレクサス車をラインナップしている「KINTOSERECT」という大きく2つのカテゴリーがあり、基本的なシステムはどちらも同じですが、後者の方は高級車種に乗れるプレミアムプランと解釈すればよいでしょう。

出典:KINTO公式サイト

自動車を購入・保有するのではなく、利用料を支払い、共有するため、「サブスク」と呼んでいますが、本質的には従来からあるカーリースという枠組みの中の1つと言えるでしょう。一般的なリースと大きく異なる点は、KINTOでは通常加入者の条件次第で保険料が異なる任意保険まで、利用料に含めて「ワンプライス」ということです。

当然ながら頭金は不要ですし、リース同様にメンテンナンス料・車検代(※1)・税金なども利用料に含まれるため、感覚的に言えば敷金・礼金不要で火災保険に加入済、かつ地方税までもが家賃に含まれている新築賃貸マンションのようなもの。契約はトヨタの各店舗、そしてWEB上でも可能で、3年の契約期間中(※2)の月間走行距離制限は1500km、トータルで54000kmと一般的な残価設定ローンに比べると条件が割とゆるいのも特徴です。

利用料は車種によって異なりますが、選べる車種はルーミー・パッソ・アクアといったコンパクトカーから、ライズ・C-HR・ハリアー・RAV4やノア3兄弟はもちろん、クラウンやGR・モデリスタ仕様車まで網羅しています。また、UX・NX・LX・LSなどといったレクサス自慢の高級モデルに乗れますし、新車購入時同様カラーリングや各種オプションも自由に選択できます。

※1 3年契約時は初回の継続車検が発生しないため料金から除外
※2 他に5年・7年契約あり

キント(KINTO)が成長している理由

前述したように、ワンプライスで駐車場代や燃料代以外のコストを全く気にしなくて良い利便性がKINTOの持ち味です。サービス開始初年度はなかなか利用者が増加しなかったものの、翌20年12月には累計契約が1万2,300件に達するなど急成長を遂げています。

ただ、自宅にいたまま映像や音楽を好きなだけ視聴できるエンタメ系サブスクが、コロナによる巣ごもり需要の高まりに合わせ成長しているのは理解できますが、KINTOのように本来外出自粛とは対極にあるビジネスがなぜユーザーに受け入れられているのでしょうか。

理由その1「時代背景」~withコロナに対応する生活スタイルの変化~

20年4月の緊急事態宣言により不要不急の外出自粛が要請されたころ、私たちは食料品や日用品を備蓄したり、自炊を心がけ外食を控えて冷食やデリバリーを利用したりするなど、柔軟に対応してきました。

しかし、コロナの脅威は一向に終焉を迎えず、外出自粛が要請されてからすでに1年数ヶ月が経過。要請に応じて自宅にこもったままだと精神的負担が大きいですし、ストレス発散や気分転換のためのレジャーや買い物が、そもそも不要不急の外出に当たるか疑問に感じている人もいるのではないでしょうか。また、業種や地域性によって浸透率はまちまちですが、スマホ・タブレット・パソコンを駆使したリモートワーク、遠隔授業、飲食店の営業時間短縮などの影響で、外出時間や外出の機会が一気に減少しました。

その結果、主たる移動手段だったマイカーを購入・維持するコストが「もったいない」という意識が生まれ、それを節約する手段としてカーシェアやカーリース、KINTOなどの「自動車共有ビジネス」が台頭してきたのです。コロナ禍は一活性ではなく、引き続き注意が呼びかけられていますので、新しい生活様式に則って暮らしていく必要があります。そして、誰にとっても欠かせない移動についての新しい生活様式の一つとして、KINTOを始めとする自動車共有ビジネスが拡大していくと予想されます。

理由その2「財産から手段へ」~自動車という存在の変化~

KINTOが市民権を得たもう1つの理由として、従来まで不動産に次ぐ個人財産として一種のステータスシンボルであったマイカーが、給与・生活水準の向上や若者の自動車離れの影響により、立ち位置が変化していることが挙げられます。中にはバックや靴のように、TPOに合わせて使い分けるユーザーまでいるのです。

特に若い世代は、自家用車を購入・保有すると税金など余計なコストがどうしても発生するため、必要な時に単純明快な利用料のみで使えるKINTOのような自動車サブスクに、強い興味を抱き関心を寄せています。KINTOの利用で大きなメリットを享受するのは若い世代のユーザーであり、このサービスの根本は市場のトレンドを牽引する彼らにもっと気軽に車を買って利用して欲しい、という思いから始まりました。

キント(KINTO)を利用するメリットとデメリット

どんなに優れた商品サービスであっても、利用するメリットと同時に少なからずデメリットも存在します。KINTOにはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

メリット1 お手軽な利用料金

KINTOはサービス提要開始から、ネット上で利用料が割高であるという評判が多く見受けられましたが、それはあくまで購入と比較した時の話であり、税金やメンテンナンス・車検費用を考慮されていないので正しいとは言い難いものです。また、一般的なカーリースと比較してもリーズナブルで、利用料には任意保険代も含まれているため、同車種・同期間であればKINTOのほうが料金的に安価です。

メリット2 契約手続きが楽チンで分かりやすい

KINTOは費用がすべてワンプライスで完結するため、リース初心者でもコスト管理がしやすいのもポイントです。申込・審査の手続きは購入時よりスムーズで、納車まで1,5~2ヶ月と比較的スピーディーです。うっかりして税金を支払い忘れる心配もなく、毎月の一定料金を支払うだけで済むシンプルさも大きなメリットです。

メリット3 ライフスタイルに併せ新車を乗り換えできる

KINTOには、就職・結婚・出産など生活スタイルや家族構成・人数の変化に合わせ新車を乗り換えることが可能な、「のりかえGO」というプランがあり、3年プランは契約から1年半後、5年・7年プランは3年後以降から契約満了4ヶ月前までの期間に申込可能です。

乗り換えには契約プランや時期に応じ、一定の手数料(1~6ヶ月分の利用料)が発生しますが、今所有している車を売却して新たに購入するのに比べると手間やコストを大幅に削減できます。ライフスタイルや家族構成などが変われば、必要な乗車店員や移動する場所・時間なども変化するため、その都度フィットした車種へ乗り換えしやすいのは、新車購入にない大きなメリットと言えるでしょう。

メリット4 トヨタの車検・整備が付いているので安心

商品を熟知しているはずの製造・販売メーカーが自ら整備・車検を手掛けたほうが、より安心でスムーズであるのは確かです。トヨタを始めとする新車ディーラーへ整備や点検を依頼すると、他の業者に依頼するより若干料金的に高めなのがネックですが、KINTOの場合は利用料金にそれらが含まれているため、出費を気にすることなく安心して任せることができます。

キント(KINTO)が向いていない方とは

一方、KINTOを利用する際に、よく吟味すべきと言える大きなデメリットも。

3・5・7年から選択可能な契約期間の途中で解約した場合、決して安くない中途解約金が発生する点です。一般的なカーリースでも同じような解約金が発生しますし、購入時のローン返済を完済前に途中で投げ出すなんてことはできませんから、中古車を一括購入するかレンタカーやカーシェアを利用しない限り、否応なく発生するデメリットと言えるでしょう。問題は、KINTO最大の特徴でもありますが、事故発生時に人的・物的被害を補償してくれる任意保険が利用料に含まれているため、条件によって「購入+任意保険orリース+任意保険」より、利用料が割高になってしまうことです。

通常、任意保険は、主たる運転者の条件や他の運転車の有無によって大きく保険料が変化しますが、KINTOの場合は契約期間や車種が同じなら、誰が利用しても利用料に含まれる保険料が同額です。そのため、ノンフリート等級が高く長年事故を起こしてない方で、任意保険料に大きな割引が適用されているベテランドライバーの場合、等級が低い若い世代のドライバーに比べ任意保険料分、KINTOの方が料金的に損をする可能性があるので注意しましょう。

キント(KINTO)のこれから
~自動車のサブスクは今後も伸びて行くのか?~

KINTOはうまく利用すれば非常にメリットが多く、withコロナ時代に適合した優秀かつ利便性の高いサービスです。サブスクに抵抗のない若い世代を中心に、トヨタの目論見通り車離れを食い止め、新車の利用を促す起爆剤になるポテンシャルを秘めています。

また、トヨタ車の信頼度や魅力に後押しされたのか、認知度においても日産やホンダなど他の自動車メーカーがリリースしたサブスクサービスを、大きく引き離しているようですが、肝心の利用率ではサブスク全体の0,5%と、まだまだこれから。今後、KINTOのような自動車サブスクが普及するためには、サービスの利便性やメリットをアピールするとともに、違約金制度の見直しやさらなる車種ラインナップの充実など、デメリットを払しょくする工夫が必要かもしれません。 加えて、トヨタほどの企業パワーがあれば、事故率の低いドライバーが有利になる任意保険を開発し、KINTOをさらに進化させることも十分可能です。そうすることで、サービスは新車販売台数の減少に歯止めをかけ自動車産業を救う存在になるのではないでしょうか。

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