LINE – 地図の進化と移動の未来

LINE – 地図の進化と移動の未来

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中村 浩樹
Clova企画室 室長
LINE株式会社

9月より提供が開始されたLINEカーナビ。音声操作ができ、高品質な最新の地図が使える無料カーナビアプリとして注目を集めています。LINEカーナビの事業責任者でありClova企画室室長を務める中村浩樹から、LINEがカーナビ事業を始めた理由、LINEカーナビの機能、LINEカーナビで実現したいことについてお話いただきました。

LINEの紹介

中村:本セッションでは、私たちが現在取り組んでいるサービスのご紹介をさせていただきます。私はLINE株式会社でAIの事業部に所属し、ClovaというAIアシスタントの企画の全般を担当しています。LINEカーナビの話をする前に、LINEについて少しご紹介させてください。

LINEアプリには月間アクティブユーザが8,200万人いますので、日本の人口からすると2/3以上のお客様が使ってくださっていることになります。そのうちのデイリーユーザーは86%という、巨大なユーザーを抱えるプラットフォームを中心に事業を展開しております。ただ、このプラットフォームを維持していくのかというと、私たちは決してそうは思っておりません。そのため、現在は大きく分けて3つの事業に注力しています。1つ目がLINE Payを中心としてFintech事業、2つ目がコマース事業、3つ目がAI事業です。ここで紹介するLINEカーナビはAI事業の中で取り組んでいるものです。

LINEの進化を加速する 3つのAI事業

はじめにAI事業で取り組んだのがClovaというAIアシスタントのプラットフォームでした。2年半ほど前、音声で音楽をかけたり家電の操作ができたりする「WAVE」というスマートスピーカーを販売し、そこからキャラクターモチーフのデバイス、ディスプレイ付きモデルも展開。これらを製造して販売する傍ら、SONY様が販売しているXperia Ear Duoというイヤホン型のデバイスにプラットフォームを提供してイヤホンでもAIアシスタントが使えるようにしました。

日栄インテック様が開発された「スマートミラー」もClovaを連携しています。使い方としては、鏡を見て身支度を整えながら、今日の占いやラッキーカラーを音声で聞いてその日の服装を決めることも可能です。これら、スマートスピーカーに搭載するだけではなく、日常のあらゆるところにClovaを展開していこうと取り組んでおります。

二つめの事業が「LINE BRAIN」です。これは、Clovaで培った技術をソリューションとして提供していく事業で、私たちがもともと持っていた技術であるチャットボットのエンジンや音声認識、音声合成、OCR、画像からテキスト情報を抜き出す画像解析などをPaaS、またはクラウドとしてBtoB向けに提供しています。プラットフォームと部品を提供し、それぞれの事業者様がオーダーメイドでサービスを作っていただく基盤になりたいと考えております。

そしてもう一つ、「LINE Search」として検索事業への参入に再チャレンジしています。実は、10年近く前に検索事業をして一度撤退しましたが、今後AIが主力になっていく中で、「AI×サーチ」というキーワードでもう一回チャレンジしようと思ったためです。「LINE Search」は、LINEでコミュニケーションを取りながらニュースを検索したり、欲しいものを検索したりできるよう、画像検索、QRコード、位置情報などの機能も統合しました。ショッピングの場合、たとえば眼の前にあるペットボトルの写真を撮るとそのまま製品のオンラインサイトを立ち上げオンラインで購入が完了できる。この機能を私たちは「ショッピングレンズ」と呼んでいますが、このようにオフライン・オンラインをAIの技術でつなぎ、そこからコマースの新体験を提供できるように、今までと違った角度からリサーチ事業に取り組んでいます。

LINEカーナビとは

モビリティ分野の取り組みとして、9月初旬より「LINEカーナビ」をリリースしました。これは、AIアシスタント「Clova」と、長年のノウハウが詰まったトヨタの高品質カーナビゲーションエンジンを組み合わせたプロダクト。私たちは「AIカーナビ」と呼んでいます。

LINEの音声技術とカーナビを組み合わせて、よりより運転体験を実現したいというのが大きなコンセプトをもとに、話しかけるだけで目的地を検索したり、LINEを送受信したり、ナビゲーション中でも音声でコントロールできるように開発しました。

今まではカーナビゲーションを搭載するのに、安いものでも数万円、高性能なもので数十万円もかかっていましたが、ナビゲーションと同じエンジンをスマートフォンに移植し、無料で利用できるのが最大の特徴です。スマートフォンと車載器を繋ぐ規格「SmartDeviceLink(スマートデバイスリンク)」にも対応しています。

リリース後の反応からわかったこと

リリース後の反応から、いくつかわかったことがありました。

・音声操作を通じたインターフェイスは車との相性がいい

私たちは音声をコンセプトにしていますが、一方では乗車前にタッチ操作した方が早い場面もあると理解しています。音声とタッチ、どちらでも操作ができるように設計しましたが、アプリ上では半数以上の操作が音声で行われていたのです。中でも、お子さまがトイレに行きたいシーンがあった場合に、運転をしながらでも音声で安全に近くのコンビニやガソリンスタンドなどトイレが可能な場所を探したり、ナビゲーションしたりすることができる、その点を非常に評価いただいております。また、ナビゲーション機能だけではなく、LINE MUSICやradikoなどエンターテインメントコンテンツの充実もポイントです。

・LINEも音声ならより安全

実際に、車の運転中にスマホを気にされる方の様子を伺っていると、連絡をやりとりするためにLINEを利用される方が多くいらっしゃいます。弊社のサービスを利用いただけることはありがたい話ではありますが、運転中の画面注視は非常に危険です。私たちとしてはとにかく皆様の安全が第一ですので、LINEカーナビでは音声でLINEのやりとりができるようにしました。こちらもユーザー様にご好評いただいております。

・運転中に家電を操作

車を運転しながら自宅の家電を操作することができる機能を搭載しているのですが、Wi-Fiに繋がっている家電であれば直接コントロールができますし、Wi-Fiに繋がってなくても、私たちが提供しているスマートスピーカーには赤外線リモコン機能がございますので、それと連携することで赤外線リモコンで操作する家電であれば、LINEカーナビからも操作が行えます。暑い日は、自宅に到着する10分前にエアコンをつけることも可能です。これからの季節は寒くなってきますので、より重宝するのではないでしょうか。

・音声なら後部座席にいても届く

タッチ操作は手が届く範囲でしか対応できませんが、音声なら後部座席にいても安全に操作が行えます。
例えば後ろに乗っているお子さまが音楽を選曲することもできるのです。また、走行中にお子さまが気になったものを聞いてみたり、到着時間を訪ねたりしても、Clovaがちゃんと声をキャッチして答えてくれます。

これらはもちろんドライバーのためのツールではありますが、乗車しているみなさんのコミュニケーションハブになりたいのです。

LINEカーナビのコンセプト自体は決して目新しいものではありません。ただ、このコンセプトをプロダクトに落とし込み、多くのお客様にから便利だなと思ってご利用いただいている。このコンセプトを実現できる時代がようやくやってきたのだと思っています。

LINEカーナビで今後実現したいこと

トヨタさまが、9月にカローラをフルモデルチェンジして新型カローラを発表しました。新型カローラにはディスプレイオーディオが標準装備されていますが、これは「SmartDeviceLink」対応機器となっており、スマートフォンと連携してさまざまなアプリケーションが利用可能です。LINEカーナビも「SmartDeviceLink」に対応しており、新型カローラのディスプレイオーディオをはじめとしたSDL対応機器と連携し大きな画面で利用することができます。実際にこのようなコネクテッドカーが次々と世の中に誕生しているのです。

都市部では通勤時に車を利用する方は少ないでしょうが、地方にお住いの方は、職場に向かう通勤時間やお買い物など、日常的に多くの時間を車の中で過ごされています。その貴重な時間の中で、私たちのようなインターネットサービス事業者が安全にサービスを届ける基盤がいよいよ本格的に整ってきた。そのことが肌感でわかるようになりました。

今後、サービスをより良いものへと変えていくために取り組んで行きたいことが、音声操作の品質向上です。今以上に便利かつ安全に使っていただくために精度をどんどん上げていきたいですね。また、渋滞情報の精度とそれによる到着予想時間の精度の向上にも力を注ぎたいと思っています。現時点では、トヨタ様のコネクテッドカーから収集されたプローブ交通データも渋滞予測の計算に使用していますし、LINEカーナビでも使えるようになっていますが、LINEには8,200万人のユーザ様がおりますので、二つのデータを掛け合わせることで次元の違う高精度な予測と計算が可能になるはずだと。そして一般の利用者様のみならず、事業者様にとっても価値がある情報になれば弊社としても嬉しい限りです。

性能を向上した先に成し遂げたいのが、「車と話せる」を日常の光景にすることです。 12月に道路交通法の改正によって、ながらスマホに対する刑罰がより厳罰化されますが、他方で、カーナビやスマホをはじめ、車に乗りながら画面を注視したり、タッチ操作してしまうという方はまだ多くいらっしゃると思いますので、より安全に、よりスムーズにインターネットを利用いただくために、音声というインターフェイスを一般化させたいと考えています。
音声アシスタントはあくまで人間の命令をボイスコマンドとして理解し、それを種別に実行するシステムです。しかし、もっと人間味を与えるといいますか、昨日の情報を加味しながら「昨日検索していた●●に寄ってみますか」と提案するなど、双方間のコミュニケーションができるようにしていけたら、もっと車内の体験が楽しくなるかもしれません。

オープンイノベーションを活性化し、よりよいサービスを実現させたい

このようなサービスをつくる音声認識、音声合成、自然言語処理といった要素技術をLINEグループは内製で作っております。ですので、LINEカーナビをお使いいただくユーザー様が増えれば増えるほど音声認識の精度が上がっていきますし、これを他のLINEのサービスにも利用することができるのです。

サービスを単体として伸ばしていくことも重要ですが、横へも伸ばしていけるように、私たちはサーチ事業も始めました。最近では、行きたい場所をLINE上で探すこともできます。

「LINE BRAIN Project "DUET"(現サービス名「LINE AiCall」)」は、レストランの予約受付と予約管理をAIが代行するサービスです。LINE上で行きたい場所を探して、それがレストランであれば予約をしますよね。DUET が予約を受けた後に、目的地までClovaが案内する。そしてお支払いはLINE Payを利用する。このように「探す」から「支払う」までのシームレスな体験をLINEのプラットフォーム上に作っていくことで、運転以外の全体験をつなげて行きたいと考えております。

ただ、一社だけでできることは限られています。LINEカーナビも、自動車ブランドトップのトヨタ様と協力しながら、一つのプロダクトとして開発を進めてきました。このように、オープンイノベーションで共創していくことが今後重要になっていきますので、ぜひこれを機に協業を検討していただける企業様がいらっしゃいましたら幸いです。私たちは業務をLINEで完結することが多く、即断即決がモットーです。本セッションのお話を聞いてアイデアが浮かびましたら、ぜひお声がけください。ありがとうございました。

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