ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -後編

ドライバーのパートナーとして事故を未然に防ぎたい。AI運転アシスタントの「Pyrenee Drive」とは -後編

前編では創業の経緯や製品の特徴についてお話しいただきましたが、後編ではPyrenee Driveの技術がどのように事故を減らしていくのかを伺います。

ヒューマンエラーをなくすための機能を搭載

Pyrenee Driveは実際、どのようにして事故を防ぐのでしょうか。

Pyrenee Driveは、事故原因の大半を占めるヒューマンエラーを無くすことを目指した製品です。

たとえば、目の前で自転車に乗った子どもが飛び出してきたとしましょう。Pyrenee Driveは、自転車がどのような動きをするかを予測して、このままだとぶつかると判断したら早めに感知してお知らせします。ですので、この場合は飛び出した瞬間くらいの早いタイミングで「自転車に注意!」と音声アラートで通知します。

走行時のドライバーの視野角は一般的に35度と言われていますので、この角度の外側ははっきりと見えていません。そのうえ、考え事をしている時や急いでいる時はさらに視野角が狭くなります。コンピューターの利点は、中央に位置するものも端にあるものも全く同じように見ることができることですので、その強みを活かしたドライバーのサポートをしたいと考えています。

私個人も自分の不注意でヒヤッとした経験があります。多くの車が行き交う道路で右折しようと待っていた時に、直進車に気を取られ過ぎて、目の前にいる歩行者に気がつかなかったんです。その時は助手席に人がいて声をかけてくれたので何もありませんでしたが、少し間違えれば大変なことになっていたはず。視界には入っていたのに、意識が向いていなかったため“見えなかった”んです。

Pyrenee Driveはまさに、その助手席の人を目指しています。人ですと一度に複数のものを把握することはできませんが、コンピュータなら人が対応しきれない部分をしっかりフォローすることができる。最終的な判断能力はまだまだ人の方が上ですが、認識能力はコンピュータの方がずっと高い。そうした利点を最大限に活かせばドライバーの良きパートナーになれるはずです。

また、内側にもカメラが付いており、ドライバーの目や顔の向きを捉えて危険を察知できるようになっています。ドライバーがよそ見していると「前をみないと危険ですよ」と音声で注意を促します。

そのほかには、「前方注意です」「追突注意!」「歩行者が目の前にいます」といったアラートがあります。

交通事故は①見落としなどの原因があって②人や車にそのまま向かい、③最後ぶつかるという流れで発生しますが、Pyrenee Driveは①の原因を潰すためのもの。最近では安全支援システムの精度が向上し、ぶつかる瞬間にブレーキが作動するものもありますが、その前である「原因」の段階でドライバーに通知して事故を防ごうという考えです。

それに加え、利用者が経験したヒヤリハットやアラートが鳴った地点など、危険な場面のデータをクラウドに集めて、ディープラーニングの追加学習を行います。AIは学習量が増えれば増えるほど認識能力や予測能力が向上するため、運用しながら事故を防ぐ能力を継続的に高めていく設計になっているのです。

仕事でも、ダブルチェックを行うことで見落としを劇的に軽減できますよね。1%の見落としは、2人で行うことで0.01%になる。ダブルチェックの法則を活かしてちょっとした見落としも大幅に減らしていきたい。売ったら終わりではなく、購入いただいた後も性能を常に高めていくことで、もっともっと事故を減らしたいですね。

他にはどのような機能や特徴がありますか。

カーナビ機能も追加する予定ですし、スマホとつないで通話ができたり、音楽を聴くことができたりするなど、ドライブの時間が日常的に楽しくなる機能も含んでいます。

車両と歩行者の情報がつながればもっと安全な社会が実現する

中長期的にはどのような目標を掲げていますか。

まずはPyrenee Driveをソフト面、ハード面ともに進化させ、法人個人関係なく多くの方に利用いただけるようにしていきたいですね。そして、さらに安全な社会を実現するために、歩行者が利用しているウェアラブルのデバイスやスマホアプリなどと連携し、歩行者と車両と双方向で通信のやりとりが自動でできる世界を作りたい。

見通しが悪い交差点で、ドライバーから何も見えていないとしても、ウェラブルデバイスやアプリを使っている人が近くにいれば、その情報をキャッチしてドライバーにアラートを出して注意喚起することができる。そうすれば、ほんの些細な不注意で起きるような事故も防げるのではないかと考えています。

2020年に発売開始とのことですがどのような方にご利用いただきたいですか。

Pyrenee DriveはB2BとB2Cと同時展開していく予定です。B2Bの法人向けで想定しているのは、物流系の企業様の利活用。なぜなら輸送トラックは大型のものが多く、被害が大きな事故につながりやすいからです。並行して、交通手段として日常的に利用されるバスやタクシーにも事故防止や事故低減の機能を提供していきたいと思っています。ドライバーの様子も内側のカメラで感知できますので、眠そうな表情を感知したらドライバー本人に直接声をかけたり、事務所や営業所に通知を送って注意いただいたり、2人交代制の長距離バスは早めに交代を促したりするなど、状況に応じた適切な事故防止対策が行えればと思います。

スマートドライブとのコラボレーションすることでどんなことを実現できるでしょうか。

Pyrenee Driveは事故を減らす・防ぐことに特化した製品です。スマートドライブが持つ車両管理やテレマティクスシステムと共同することで、お客様に対して「安全と効率的な管理」というより大きな価値を提供できるのではないでしょうか。

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