倉庫のIT化は物流業界をどう変えていくのか

倉庫のIT化は物流業界をどう変えていくのか

参照元: http://www.geekplus.com.cn/en/

運輸業界は、約34兆円もの巨大産業であり、うち24兆円を占めるのが物流業界。日本のGDPで考えると5%、全産業就業者数の3%を占めています。

生産者からメーカー、小売、消費者や事業者など、様々な担い手が関わっている物流の世界は、日本の経済を大きく動かし、私たちの生活上なくてはならないものになっています。しかし、リーマンショック以降引きずっている景気の低迷に伴い、業界全体として抱える労働者不足が大きな問題として取り上げられている昨今。

そんな中、物流倉庫はどんどんデジタル化が進んでいると言われていますが、実際日本国内ではWMSのほかにどのような施策がなされているのでしょうか。

倉庫業における課題

物流業界のみにおける課題ではありませんが、どの業界も全体的な人材不足に悩まされています。倉庫業では営業収入が1兆7,000円ほどあるにも関わらず従業員数は10万人ほど。

国土交通省では物流業界全体の課題を解決すべく、急速に進む人口の現象や災害などの国土を巡る大きな環境の変化や危機感を共有し2050年を見据えた国土づくりの理念や考え方を示す国土のグランドデザイン2050を公表。

さらに、物流政策の具体的な取り組みとして、産業活動と国民生活を支える効率的な物流の実現に向け、災害に強い物流ネットワークの構築やグローバルサプライチェーン、内陸コンテナターミナルの活用などによるコンテナのラウンドユース、トラック輸送から海運・鉄道輸送への転換を進めるモーダルシフトへの切り替えなどを積極的に進めています。

物流業界の拠点の一つである倉庫業。倉庫施設を建設するにあたっては広大な敷地面積が必要となり、湾岸沿いであることも多くあります。都心よりも離れており、現地までの距離も遠方となるため通勤が困難であることもなかなか人材が確保しづらい一因でもあると言えるでしょう。海外ではARやAIの導入事例が増えつつありますが、日本国内では2002年にロジサードからWMSのサービス提供が開始し普及が広まってはいるもののまだ一部。さらにロボットや最先端の技術が普及し、ヒトに変わって当たり前のように業務を行うようになるには、もう少し時間がかかりそうです。

倉庫内作業はロボットに任せよ?

物流業界においては、長時間でかつ荷物の持ち運びなどといった負荷の大きな作業を求められることが多くあります。先ほど述べたように、少子高齢化を背景に人材不足が叫ばれている中、テクノロジーを駆使した業務の効率化や自動化が望まれています。

荷下ろしや荷積みの自動化を行うための技術、荷物を確実に把持するための技術、荷物の正確な情報を読み取る技術、様々なサイズの荷物の箱を扱う技術などの開発が各社で進み、物流業界全体が大きな期待を寄せているのです。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、2015年8月より、ユーザーニーズの市場化の出口を明確にしたロボット開発の支援を開始し、10のテーマに対して補助金の交付を決定しました。そこで採択されたトーヨーカネツソリューションでは、荷捌きやピッキングの自動化を行うロボットの開発に着手。同社をはじめ、時間や手間のかかる伝票を元に商品を仕分けとしたピッキング作業を人的に行うのではなく、迅速な自動ピッキングを可能するピッキングロボットの開発が進んでいます。

中には固定場所への設置型ではなく、動画のような協同型ロボットによるピッキング支援も。荷下ろしやピッキングは複雑な作業であるため、未だにヒトの手で行われることがほとんど。このロボットは、既存の棚やガイドの変更、ロボットのためのライン工程を敷く必要はなく、倉庫内は現存のままヒトがやらなくて良い作業はロボットに任せて業務をシンプル化するというもの。

人が指示することなくロボットが必要とされる作業を認知し自発的に動く。さらには既存のWMSと連携をとることで、柔軟に状況に応じた適切な作業をロボットに指示できるといいます。ヒトが効率よく働けるよう、今後はこのようにヒトとロボットが連携しながら倉庫内業務を行うことが増えていくかもしれません。

倉庫×AI=ビッグデータの時代に変わる

通販バックヤード業務に特化したフルフィルメントサービスを提供している株式会社アッカ・インターナショナルは、2017年7月24日、日本で初めて中国最大のインターネットショッピング・モールのアリババグループが採用するAI物流ロボット「EVE」のテスト稼働を開始。

ECサイトで顧客が購入した商品を倉庫から取りに行くピッキング作業と、入荷時に商品を保管する棚入れ作業をロボットを利用して自動化することで、従来の人力と比較して作業効率は6倍以上に上がったと言います。

このロボット導入により倉庫内業務のオペレーションを刷新したため、ヒトによる作業は出荷指示と商品を入れる作業のみになり、省人化と人件費の削減を可能にしました。ロボットを制御するシステム内ではモノが動いたデータを蓄積・判別することで、人気商品の棚を出荷場所の近くに自動で移動させ、さらなる倉庫の最適化を図ります。AI(人工知能)も兼ね備えたロボットであるため、データを蓄積して新商品の需要や店舗販売商品の欠品の予測だてをするなど、マーケティングの材料としても活用の幅を広げることができるとか。

倉庫はモノを保管したり入出荷するだけでなく、人々の生活を支えモノの需要と供給のバランスを把握するための“ビックデータ”を束ねる重要な役割を担ってくことになるでしょう。

未来の物流の常識は無人化か

2016年7月、ロジスティクスイノベーションを掲げ、東京に研究開発拠点となるR&Dセンターを開設した株式会社日立物流。ここでは次世代の物流センター実現に向けて、究極の自動化と高効率オペレーションの追及による3PL事業の強化のためにテクノロジーの研究開発及び実証実験を行い、実用化を目指し日々研究と開発が行われています。現在は、無人フォークリフト、デパレタイズロボット、Racrew、双腕型ピースピッキングロボット、RFIDリーダ、画像検品システムという、6つのテーマにおける主要研究が進んでいます。

高度な技術が求められる「デパレタイズロボット」は、ロボットメーカーとの共同研究を経て2018年度に実働予定。マスタでの事前登録が必要無く、最新の画像認識技術で混載パレットからケースを取り出しコンベヤへ投入することが可能なこのロボットは、日本初の技術が搭載されているといいます。

また、アパレル業界などで活用が本格化しつつあるRFID(※1)の実装を想定し、入出庫時などの一括読み取りが可能なゲートタイプの検証を実施。「画像検品システム」では、WMSなどのハンディターミナルなどで行われているバーコード検品作業をカメラで一括読み込みして検品することで、作業時間を大幅に短縮する技術を2017度中に実働させる予定。

日立物流はこれらの技術を単独での開発・提供するつもりではないようです。彼らが目指すのはあくまで「究極の自動化」、つまり「人ゼロの現場」。加速し続ける人手不足問題に対し、様々なプレイヤーの技術を集結させながら持続可能な物流センターの実現に向けた取り組みが行われているようです。

※1 ID情報を埋め込んだRFタグから、電磁界や電波などを用いて非接触で情報を読み書きする自動認識システム。駅の自動改札などでも導入されています。

スマートロジスティクスが物流の救世主に?

本メディアでは繰り返し言及してきていますが、物流業界は人手不足と高齢化、そしてECショッピングの増加よる小口荷物の増加という三重苦を課せられているのが現状ですが、今回見てきたような倉庫内ロボットテクノロジーの発達を垣間見ると、この苦境を打開する希望も見えてきますよね。

また、自動運転技術の発達と普及による運送の自動化が平行して進んでいくことで、物流現場全体における省人化が本格化していくことになりそうです。運送が完全に無人化するまでにはまだ時間がかかりそうですが、少なくとも向こう数年で現状より少ない作業員数で数倍のアウトプットを出せるような物流が生まれ始める可能性もあるでしょう。

これからますます楽しみな物流、これからもしっかりウォッチしていきたいと思います。

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