【カーナビアプリの現状】Yahoo!カーナビがトンネル内で案内可能に

【カーナビアプリの現状】Yahoo!カーナビがトンネル内で案内可能に

日々進化するスマホ用カーナビアプリの中でも、無料で利用ができ多数のユーザーを抱える「Yahoo!カーナビ」。同サービスがアップデートされ、スマートフォン本体の加速度センサーに対応した、トンネル内案内機能が可能になったと先日話題になっていました。

これまでも他のカーナビアプリでは対応されていたりするので、むしろYahoo!カーナビはずいぶん時間かかった方なのでは?という印象も受けます。

今回はYahoo!カーナビを含むその他カーナビアプリの対応状況や今後の展開なども見ていきたいと思います。

Yahoo!カーナビがトンネル内案内を実装

Photo credit: uemura

2016年11月24日、スマホ(スマートフォン)向けカーナビアプリの「Yahoo!カーナビ」がようやくスマホの加速度センサーなどに対応、トンネル内での案内が可能になりました。

実はこの機能、2015年8月のリリースに向けて開発され、同10月時点でも「今秋(2015年秋)リリース予定」とされていました。それが遅れに遅れて、1年後のアップデートでようやく対応したというわけで、この機能が意外に奥が深い事が伺えます。

何しろソフトウェア的にはいかように開発できても、肝心のスマホハード側の加速度センサーの精度が機種によりマチマチですから、センサーさえ備えていればそれなりに精度を発揮するまでには苦労があったのだと思います。

実際、今回のアップデートで対応したトンネル内案内でも、スマホの機種によりセンサーの感度が異なる事から、ズレが生じる事もあるとされています。

老舗Google Mapsのナビ機能は少なくとも2年前に対応済み

Photo credit: Yahoo!カーナビ公式サイト

実のところYahoo!カーナビのトンネル内案内はかなり後発で、同じく無料ナビアプリで日本ではYahoo!カーナビと共に双璧を成すGoogle Mapsは、既に2014年段階でスマホのセンサーに対応しています。

それも通常通りGoogle Mapを開きGPSを用いて動作させている時と、ナビ機能を使っている時では動きが異なり、ナビ機能を使っている時のみスマホのセンサーと連動する仕組みです。車載カーナビとして利用する時にはシガーソケットからUSB電源を取れますから、ある程度電力消費量が大きくても何とかなります。
(ただし、2A以上のUSB給電能力が無いと、消費に給電が追いつきませんが)

徒歩の場合は車ほど長距離・長時間移動が少ないと考えると、消費電力が大きくても間に合うでしょう。そうした例から考えると、Google Mapsでナビモードと通常モードで機能を変えて、電力消費を抑えているのは「かゆいところに手が届く」機能と言えます。

Yahoo!カーナビはカーナビ特化型なのでそこまでの配慮は不要でしょうが、電力消費が速いため車体側からの強力なUSB給電機能が不可欠になるでしょう。

カーナビタイムもiPhone版が6月に対応済み

Photo credit: Norio NAKAYAMA

有料ナビアプリであれば、ナビアプリの老舗と言える「カーナビタイム」も、遅ればせながら2016年6月にiOS版でトンネル内での案内を実現しています。

こちらは有料アプリらしくより本格的に、速度情報や走行距離、停止などを判定可能。iOS搭載機種(つまりiPhoneやiPad)の各種センサーに特化しているので、高精度の判定が期待できるでしょう。

例えばAndroid版Google Mapでは機種によってはトンネル途中で案内を止めてしまったり、停止を認識せずに自車が進んでいると判定してしまいます。そのような状況でもカーナビアプリは正確に停止や速度判定を行うので、GPS信号無しでもかなりの精度が期待できます。

Android版もいずれ対応するようですが、やはり機種によって異なるセンサーの性能をどう考えるかで、どこまで仕様を詰めるかが課題でしょう。

GPSを使用せずセンサー頼りのユニークなナビも

ここまではGPS/スマホセンサーの併用型ナビアプリですが、中には「電池を消耗するGPSは最初から使わない」と決めたナビアプリもあります。

それが「Smart Navi – Step Navigation」です。これはカーナビアプリではなく歩行者用ナビアプリのため、利用者の身長からある程度歩幅を推測し、加速度センサーから利用者の歩行距離を検出します。

昔のカーナビでもGPS登場以前はジャイロセンサーのみの製品がありましたので、歩行者用の簡易ナビアプリとしてなら今でもアリだと考えられたのでしょう。ただし、完全にスマホの加速度センサーとジャイロセンサーに依存するため、機種によっては実用性があると言えるほどの精度が期待できないようです。

元々はポータブルナビの簡易ジャイロから発展

こうしたスマホの加速度センサーやジャイロセンサーを使用した簡易的な位置測定は、実はそれほど目新しい技術ではありません。

GPSカーナビ草創期の時点で、車速センサーなどを車のコンピューターから受け取り、内蔵ジャイロセンサーで進行方向が把握できる本格的なカーナビは存在しました。というより、純正カーナビや1台20万円以上もしたような高級機種は大抵そのような本格カーナビです。

一方で、後付けでも安価な「ポータブルナビ」と言われた小型カーナビも初期から存在しており、こちらは純粋にGPSに依存します。初期のGPS電波は精度の高い軍用周波数が解放されず、管理していた米軍が戦争の影響などで民間用GPSの精度をさらに下げていましたから、GPS便りのポータブルナビを使うのは大変だったのです。

当然トンネル内での位置表示どころか、GPS電波の入りが悪いところでは位置情報の表示が不可能で、ビルや高架だらけの東京都心部などでは使えたものではありませんでした。

しかし、ポータブルナビが簡易カーナビのPND(小型カーナビ)に移行する直前の末期、ソニーの「NAV-U」シリーズなどが簡易的なジャイロを搭載し、少なくともトンネル内でもある程度自車位置の把握が可能になるという、画期的な機能が付加されたのです。その後のPNDでも簡易的なジャイロや加速度センサーが搭載されており、スマートフォンのナビアプリによるトンネル内案内機能は、その応用と言えるでしょう。

スマホのナビアプリは機種の性能が大きく影響

Photo credit: PROShigeyama

ただしポータブルナビやPNDがある程度その機種のソフトウェアをセンサーに合わせてセットアップできているためか、トンネル内でも比較的高い精度で自社位置を表示できているのに対し、スマホではそうはいきません。

アプリ側でスマホの機種ごとにセンサーを把握しようと考えても、特にAndroid版では膨大な数の機種がありますし、特に新機種など把握は難しいでしょう。中には加速度センサーもジャイロセンサーも無い機種もありますから、センサー情報が得られない時の対応も考えなければいけません。

その点iPhoneは機種が決まっているのでいくらか楽で、カーナビタイムがiOS版のみを先行対応しているのは、そうした事情もあるのではないでしょうか。またAndroidにせよiPhoneにせよ、車へのマウント方法はユーザーによりけりですから、その方法によっては加速度センサーがまともに機能しないことも考えられます。

将来的にはすべての車がコネクテッドになり….

Yahoo!カーナビの最新アップデートではそこまで踏み込んでいませんが、同アプリは開発時点でOBD(車載コンピューターからの出力端子)から情報を取得し、Bluetooth接続でスマホに車速データなどの送信を検討しているようです。

最近の車は、マツダが全車に標準装備しようとしている運転支援装置「Gベクタリングコントロール」のように、車載加速度センサーを使って前後左右の加速度を統合的にコントロールする技術を搭載しているものがあります。

OBDから車速以外に加速度センサー情報も得られれば、機種やマウント方法に左右されるスマホのセンサーに頼る必要も無くなるので、ナビアプリは一層発展していきそうですね。

ただ、OBDを使用する際はOBDコネクターに装着するデバイスがあり、そこからBLE通信などでスマホにデータを転送するというプロセスが発生するケースが多いので、そうではなく車にダイレクトで通信することを考えるのであれば、ビルトインカーナビにそういう通信機能を標準搭載したり(そういう車もこれまでも出ていますが、あまり普及には至っていない現状があります)、あとは昨今話題になっているAndroid Auto(Google)や Car Play(Apple)のようなOSを搭載してしまうことで、よりスマホとシームレスな通信できるようになります。いずれにしても、車がネットワークに常時接続されていることが当たり前になってはいくでしょう。

かつ、昨今のIoTの隆盛で通信料がずいぶん押し下げられてきているので、常時接続のコストもさらに下がっていくことが予想されます。そうなれば、車自体にハードウェアのナビメーカーにつくってもらって搭載する必要はなく、車側には汎用的なディスプレイさえあれば、あとはそこにナビだろうがエンタメだろうがすべてのコンテンツはスマホを同期させたり、アプリを直接インストールして使えば良いので(かつ随時アップデートされていく)、車内に提供されるサービスの幅は現在の比ではないレベルになることが想像されます。

現在のナビデバイスやナビアプリは、そういう時代から遡って見れば、長い踊り場にいるような状態なのかもしれませんね。全車標準コネクテッドの世界とは、それくらいの差があるのではないでしょうか。

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