10年後、20年後に向けて今から動き出すべきだ——ヤマヒロ株式会社が見たガソリンスタンドの現在地と未来のあるべき姿 (後編)

10年後、20年後に向けて今から動き出すべきだ——ヤマヒロ株式会社が見たガソリンスタンドの現在地と未来のあるべき姿 (後編)

前編では、リアルなガソリンスタンドの現在、そして未来について詳細に語ったヤマヒロ株式会社の山口寛士氏。危機感を抱いているからこそ、次々と新たな取り組みを進められているようです。後編では、モビリティ業界で勝ち抜くために必要なことについて語っていただきました。

企業間のコラボで、変化する時代における自社のあり方を見出す

自動車業界の未来を見据えながら、現実を捉えているヤマヒロさまですが、共通ポイントサービス「Ponta」の運営をしているロイヤリティマーケティングや、スマートドライブとのコラボレーションを通してどんなことを実現されたいですか。

ロイヤリティマーケティングさんとスマートドライブさんとのプロジェクトに参加させていただいたきっかけは、スマートドライブで事業開発されている石野さんの提案でした。

ロイヤリティマーケティングさんは購買履歴をもとに、個人の趣味・趣向などのデータを取得されていますが、これらはあくまでもPontaポイントを貯める、利用する接点での分析しかできません。しかし、スマートドライブの移動データを掛け合わせることで、ライバル店への訪問について把握できるようになる。この掛け合わせから見えてくるカスタマージャーニーや顧客動向にもとづくマーケティング施策はかなり高精度なものになるという話を伺い、興味を抱いたのです。

例えばこのような取り組みを通じて、「ガソリンスタンドへ行くお客様は、その後●●に行く」といった傾向が分かれば、小さなマーケットの中でも提携すべき相手が見えてくる。日本、そして世界で提唱されているスマートシティにおいて、すべてのサービス業はシームレスにつながっていくことをイメージされているでしょうし、ヤマヒロもそこへすばやく飛び込み、経験を積みながら理解を深めていくことで、今後どのようなポジショニングへ変更すべきか、どのような連携をすべきかが見えてくると考えたのです。

なるほど。たとえば、東京都江戸川区葛西に住む家族がいるとします。その家族は車でお出かけをする際に湾岸道路経由でお台場方面へ行くか、千葉方面に出かけることが多いのですが、湾岸道路へ向かう途中にガソリンを補給し、ついでに車内で飲食できる飲み物やお菓子が欲しいと考えるかもしれない。その場合、ガソリンスタンドとコンビニが併設されていれば非常に便利ですし、そういったニーズは必ずあるはず。ですから、「ガソリンスタンドを利用した後、高確率で●●に立ち寄っている」という情報が分かるだけで、今後、さまざまな展開ができるのではないでしょうか。

新しい時代を生き抜くために、自社の強みに磨きをかける

前編では、ガソリンスタンド業界の将来に対して危機感があるからこそ、必要性を感じてさまざまな企業とのコラボレーションを進めてらっしゃるとお話しされていました。コラボレーションをする中でヤマヒロさまが大事にしているポイントを教えてください。

今後、変化のスピードは今まで以上に早くなるでしょうし、変化の振れ幅も大きくなっていきますので、同じ業界の企業ばかりで手を取り合うのでなく、他業界とも積極的に協業していくことが重要になってくると思います。

東京というマーケットは非常に広大ですから、来たる次世代モビリティ社会において、一社単独で存在感を示すのは簡単なことではありません。ですから、「その強みが欲しかった」と他企業に声をかけていただけるように自社の強みを徹底的にブラッシュアップしつつ、さまざまな企業と共に新しい時代を生き抜いていきたいと考えています。

御社の強みとは?

抽象的なところでいうと、組織能力が強く、速いところでしょうか。私が何か判断を下した際に、社員全員が同じ方向を向いて動き出すスピード感は他社よりも速いと取引先から言われることがあります。ヤマヒロは、東京近郊のリテール、つまり小売サービスに特化していて、経営資源を集中させていることも強みと捉えています。

具体的なところでは、33拠点のガソリンスタンドを持っていること、そして今後、ガソリンの需要が減退しても、東京近郊に車を活用したサービスが提供できる拠点を持っていることです。ガソリンスタンドを運営するには必ずスタッフが必要ですので、拠点と人を活かしたサービスが展開できます。

それに、ヤマヒロは東京で4つの指定工場を持っています。EVが普及されても車検制度は無くなりませんし、自動運転車についてもエイミング(安全のために取り付けるレーダーやカメラの調整のこと)が必要です。指定工場になるには、厳しい審査に合格する必要があり、一定の基準に適合した設備投資を行い、検査員と整備士を置かなくてはなりません。他にも、EV化、自動運転車になっても、コーティングやレンタカービジネスでの影響はガソリンほど大きくなく、先行して事業をしているからこそ次世代モビリティにおけるアドバンテージがあると思っています。

私たちは店舗のようなハードを持っていませんので御社が羨ましいです。

それはお互い様でしょう。私たちからするとスマートドライブさんのように無形資産というか、知的財産で勝負している企業が魅力的に映ります。

これからの時代は知的財産をどのように活用するかが重要なポイントになりますから、今、こうしてスマートドライブさんと手を取り合うことができて、非常に光栄に思います。今後も東京という街が無くなることはありませんし、東京でヒトやモノの移動が0になることはありません。そして、そこには必ず小売サービスのニーズが存在しますから、私たちが着実にお客様に支持されるサービスを提供できれば、生き残ることができる−−必要とされる存在としてあり続けることができると信じています。

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