後編:社会問題を上空で解決する—福岡発ドローンスタートアップの挑戦

後編:社会問題を上空で解決する—福岡発ドローンスタートアップの挑戦

福岡のドローンスタートアップ企業、トルビズオンで取締役COOを務める清水淳史さまへのインタビュー記事の後編です。

地価の基準と異なる空の価値

僻地ですと、掲載をしても買い手がつかないこともあるのでしょうか?

土地には地価があるように、空にもそのうち空価ができるんじゃないかと。地価と違って、電波や気象の状況で空の価格が変わる。それが市場原理によって、どう動いていくのかが、面白いところだったりしますね。

都心部の駅は便利ですが人が多すぎて、ドローンを垂直に飛ばしてもごちゃごちゃして映るだけ。逆に少し僻地であった方が、自然が多く緑も豊かで撮影スポットとしては優れているので、金額的には都心より高いということもある?

あり得ますね。どれだけ人が少なく小さな街でも、ドローンを上げるだけで、段違いに綺麗な絵を撮ることができますし。

土地と値段が比例しないというのは、なかなかおもしろいですね。森林の次はどの空の道を広げていきたいですか?

昨年10月、佐賀県小城市に登録いただきました。小城市に登録いただいたエリアは過疎地域でして、観光客でもあまり行かないようダムや山など自然が豊富な場所です。登録後、プラットフォームを介してこの場所を知ったドローンユーザーが、足を運ぶようになったと言うのです。今まで誰も訪れなかったダムが、一つの観光資源に変わった。このようなモデルを各自治体などで展開できないかと考えております。

練習であってもドローンを飛ばす場所に困っているユーザーは多くいます。トルビズオンが空の道やドローンポートを日本各地に作っていって、空の土地が整備されていけば、ユーザーにとってもメリットが大きい。
空の土地が広がっていった先のターゲットはどのような方々を想定していますか?

直近で言うと、インフラ点検を行っている事業者さま、個人では、空撮やクリエイターの方々です。この先ソラシェアに登録されている土地が増えていけば、物流関係の企業さまに向けて配送ドローン専用の道路を作っていきたいですね。

もし、高速道路の上空をすべていただくことができれば、高速道路と同じルートに沿って二台の車が同時に走行することができますよね。

ぜひ実現したいですが、物流でもっともニーズが高いと予想されるのがラストワンマイルの配送ですので、高速道路があるところは車で行けば良いと思われてしまうのです。ドローンを飛ばしてもほとんどリスクがない過疎地域や限界集落は、高齢者が多く住んでいます。将来的に自動運転が普及すれば、自動運転トラックが高速道路を利用して荷物を運ぶようになるでしょうが、僻地に住む買い物弱者の方や山間部で暮らす方に届けるためのラストワンマイルでは、空の道、ドローンの道が必要になってくるでしょう。

限界集落は、交通インフラが整っておらず、私たちのようなモビリティ業界でも大きな課題となっています。昔はもっと多くの人が暮らしていたから毎日フル稼働していたバス停も、今では1日の利用者が1人や2人程度。そうなると、ビジネス的な観点では無くした方がいいんじゃないかと思われますが、代替策もないし、困る人も出てきます。

そうですよね。人やモノの移動における“最後の一区画”の課題は、かなり根強い。物流業者からは、ラストワンマイルの配送に最も輸送コストがかかっていると言うのをよく耳にしますが、その部分のフォローをドローンならできる。だからこそ、空の道が必要だと考えているのです。

ドローン社会を築くために必要な規制

もう一つ、気になるのが国の規制です。ソラシェアは規制と密接にかかわるビジネスですが、現在の規制で、どこがネックになっているのか、どこを強化すべきかを伺えますか?

日本は、まだまだ整備途中ですが、物流を実現するために大きなハードルになっているのが、目視外飛行における規制です。目視外とは目に見えないところを指しますが、今ですと国土交通省から許可を取得していない者は、見える範囲内でしかドローンを飛ばすことができません。ただ、この規制が厳しすぎるとドローン物流が実現できないんですよね。

トルビズオンでも実証実験を重ねており、今年の5月に、福岡市で日本初となる目視外の実証実験を行いました。都市部での目視外飛行は日本で初めてでしたが、AEDを積んだドローンは無事、目的地に到着しました。このように、地道に実証実験を重ね、安全性を証明できれば目視外のハードルがクリアされていくのではないでしょうか。

強化すべきは、誰でも飛ばせるという現状を変えるべきところでしょうか。ライセンス制度もありますが、あくまで民間のものであり、発行団体によるレベルのばらつきがあると言われています。自動車には、国の免許制度がありますし、車両識別のために全てナンバープレートが付いていますよね。これからドローン社会を目指すうえでは、これと似たような制度が必要であり、2022年までに国はこのような仕組みを整備する方向で動いています。

海外は日本より整備が進んでいるのでしょうか?

国によって法整備が大きく違いますが、どの国も未だ確立しているとは言えません。アメリカの場合、Amazonがドローンの事業者としてFAA(アメリカ連邦航空局)から許可をもらい、やっと飛ばすことができていますし。

車は直接的に人命に関わりますが、ドローンが墜落した場合も人に危険がおよびます。

ドローンそのものが墜落するということは、何十キロという重さのモノが凶器へと変わり、落下することになります。その点では車と変わりません。車と同じように人命に関わるものですので、その辺りの規制はしっかり敷いていくべきでしょう。

万が一、ドローンが墜落して重大な事故が起きたり、車のガラスにぶつかって多重事故を引き起こしたりしてしまったら…。そうなる前に早く規制は敷くべきですね。

少しずつ規制はできていますが…。今の時点でそうした重大事故が発生してしまうと、日本としてのドローン産業自体がストップしてしまいかねません。そういう最悪の事態も考慮して、トルビズオンでは海外展開の可能性も考えているところです。

海外でドローンの可能性を探る

ここからは今後の事業展開について伺いたいと思います。先日、タイに行かれたそうですが、なぜ、タイを選ばれたのでしょうか?

タイは日本と比べて規制があまりなく、比較的ドローンが飛ばしやすい国です。日本だと実証実験ベースでしかドローンの運用ができないので、ビジネスとして確立するには、最低でもあと2年はかかるだろうと言われています。

一方で、タイでは広大な土地を自由に使えますし、ドローンポートを配備するというビジネスモデルで実際に実用化ができる場所です。訪れた際もNIA(タイ国家イノベーション庁)の方がその場でパパッと空を登録してくれました。

地理的にもメコン川中心に位置しており、ASEAN地域の物流の核となる場所です。

日本では規制の動きを見ながらじっくりと実証実験を重ねていきつつ、ASEAN地域やインドではビジネスとして今から動き始めようと考えています。そのため、現在、海外と日本の二軸で動いているんです。

海外の方が規制が緩いからビジネスを回せるということですね。

先述した「空の道」を作っていくには、越えなければならない様々なハードルがあります。ですので、私たちは空の道に依存しない「ドローンポート型ビジネスモデルも確立していく必要がある。そしてそれが実際にできるのは、タイをはじめアジアの地域。現段階の日本だとその都度、許可取りしなくては道が作れませんので…。

「陸のスマートドライブ、空のトルビズオン」

スマートドライブと「こんなことが一緒に実現できそうだな」という構想はございますか?

トルビズオンではドローンの飛行データを蓄積し、リアルタイムの空の利用状況を把握することができます。今は管理画面がありませんが、「Smartdrive Fleet」のように、位置情報をリアルタイムに追えるようにしたいのです。車のアイコンをドローンのアイコンに変えて。

「Smartdrive Fleet」は物流業者や配送業者でも使われていますので、そういう使い方もできますね。

ソラシェアのプラットフォームでは、ドローンがどこを通っているのかが完全に可視化できていませんので、今、どのドローンがどこの土地を通っていて、どのような動きをしているかという情報が取得できると、より安心・安全な飛行が可能になります。

スマートドライブさんは移動データをお持ちですが、それはどのように人が動くのか、どのような道で、どこに配置すればもっとも効率良く配送できるのか、物流で私たちがドローンポートを配置するときに非常に役立つものです。

トルビズオンが提供できるのは空の価格や利用状況に関するデータですので、空のデータと陸のデータを相互に結びつけて、なにか面白いことができるんじゃないかなと思います。

今は物流企業がトラックのみを所有して配送業務を行っていますが、数年後にドローンの時代が訪れたら、「私たちはトラック4台とドローン10台でラストワンマイルの配送を行っています」という企業が出てきてもおかしくありません。そうなってくると、陸路ではスマートドライブのデータから居場所を特定でき、空路の移動時はソラシェアがデータを取得し、いずれも同画面で管理ができる世界になるかもしれない。車もドローンも同じ立ち位置で物流を支える−−10年以内にはそんな時代が来そうな気がします。

おそらく、すべてが自動化されるようになるでしょう。先述した福岡市の実証実験では、陸空のモーダルシフトを行いました。陸路は輸送車が自動運転で移動し、ドローンが積んである目的地を目指す。目的地に到着したら、ドローンで荷物を運ぶ。こうしたモデルはこの先実装化されていきますので、車両とドローンがよりシームレスに連携できるようになるんじゃないでしょうか。

トルビズオンは空のデータベースをこれから集めていくところですが、スマートドライブさんは先んじて、陸のデータを集められておられます。陸はスマートドライブさん、空はソラシェアが担っていく。その中で、陸空で一緒に世界を目指していく動きができるといいですよね。

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