前編:社会問題を上空で解決する—福岡発ドローンスタートアップの挑戦

前編:社会問題を上空で解決する—福岡発ドローンスタートアップの挑戦

福岡のドローンスタートアップ企業、トルビズオンで取締役COOを務める清水淳史さまへのインタビュー記事の前編です。

上空の利用許可を売買する「ソラシェア」

まずは、株式会社トルビズオンと清水さまの自己紹介をお願いいたします。

福岡のドローンスタートアップ企業、トルビズオンで取締役COOを務める清水淳史です。僕が参画したのは、ちょうど1年半前、大学に在学中のとき(現在は休学中)。COOとしての業務に加え、九州大学でインターフェースデザインを専攻していることもあり、社内でもWebプラットフォームのUIデザインや資料作成などを担当しています。

現在のメンバーは6人ですので、経営企画から営業、ファイナンス、資金調達まわりまで、それぞれがマルチに対応している形です。

トルビズオン自体は、2014年の4月に設立した企業で、代表の増本が一人でドローンの教育やドローンを導入したい企業へのコンサルティングを行ってきました。その経験の中で空の権利の問題に気づき、私と冨田が参画したタイミングで「sora:share(以下、ソラシェア)」という上空シェアリングサービスへとピボットしています。

代表の増本さまと出会ったきっかけはなんだったのでしょうか?

ちょうど1年半前、「Slush Tokyo」というスタートアップイベントに学生ボランティアとして参加していて、二人に出会いました。その時に、代表からソラシェアのアイデアを聞き、「間違いなく、これは世界を変えるビジネスだ」と。そこから間髪入れずに参画を決めました。

ソラシェアのビジネスモデルについて、詳しく教えていただけますか?

トルビズオンはドローンの機体を取り扱うメーカーではなく、空域管理をしている企業です。長年、ドローン事業に携わってきた代表が常にぶつかってきた課題が、土地の所有者が日本の民法で上空の権利(専門家の意見では地上300mまで)を持っていることでした。これはつまり、他人の土地の上空ではドローンが飛ばせないということです。

しかし、人口が減少する中で物流や輸送を変えていく必要が出てきましたし、そのうえで米国で構想されているUberのドローンタクシーやAmazonのドローン宅配を日本でも実現するには、この法規制が非常に大きなハードルになります。ドローンを活用するには、結局のところ他人の土地の上空を飛ばすしか方法がありませんから。その課題を解決するために、土地の所有者が持っている上空の権利のマーケットプレイスを作り、権利の売り買いを促進する場を提供しているのです。

上空の許可取りは思っている以上に難しい

今の規制下でドローンを飛ばす場合、事前に許可を取る必要があると思いますが、どのような内容になるのでしょうか。たとえば、「何時何分から何時何分の間、上空何メートルを使用させていただきます」というような。

そうですね、時間や高さに関してはおっしゃる通りの内容で各所に申告、許可取りをしなくてはなりませんが、実際にはいわゆる“グレーゾーン”の中で飛ばしているユーザーも多くいます。許可を得ずに無断で飛ばすことはもちろんNG。しかし、山で飛ばす場合など、土地の所有者が分からないこともあり、許可取り自体が難航するシーンもあるんです。

許可を取りたくて問合わせをしても、「管理者がいません」と言われてしまうと、動けなくなってしまいますね。

BtoB向けでも同じ課題にぶつかりますが、ドローンのBtoB世界市場は、すでに何千億円という非常に大きな市場へと成長しており、長期的には10兆円を超えると言われています。だからこそ、弊社としてはこの問題をいち早く解決したいなと。

私たちのお客さまでもある大手インフラ企業様は、高速道路の橋梁点検をドローンで行っています。今までは足場を組んで、調べて、また崩して…というように、長い時間とコストがかかっていたところ、ドローンを活用することでその手間やコストを大幅に削減することが可能です。人手も時間も必要最低限のみ、現在ドローンがもっとも活躍する分野だと言えますね。

ただし、日々の点検をドローンで行うにはそれなりの訓練が必要ですし、訓練用の場所が必要になってきます。今までは体育館などを借りていたとのことですが、雨天時、突風時など、天候などに合わせたさまざまなシーンで練習しなくては、実際の現場で通用するスキルに到達できません。そこで私たちのサービスを活用いただき、練習をしていただいております。

体育館ですと風の影響を受けませんし、本番環境とは大きく異なります。とくに点検という重要な業務で使用されるのであれば、本番環境に合わせて訓練することは非常に大事だと思います。ちなみに、ビルの上空でドローンを飛ばす場合、ビルのてっぺんから上空の300メートルという計算になるのでしょうか?

ビルの上空で飛ばす際は不動産会社が管理をしていますので、もちろん許可申請が必要です。

また、国土交通省が決めているドローンの高度規制は地表から150メートルの高さまでです。すなわち他人の土地上空でドローンを飛ばす際は土地所有者の許可が必須となります。県道は県が管理していますし、道路も河川もそれぞれまた違う地権者がいますので、ドローンが通る道にはすべて許可取りをしなくてはなりません。

ソラシェアで築く「空の道」

現在は土地の所有者と交渉をして、「ソラシェア」にご登録いただいているのでしょうか?

そうですね。先日プレスリリースを出したばかりですが、まずは森林を大きなターゲットに進めています。森林は、日本国土の3分の2を占めており、その多くが森林組合に管理を委託されています。組合と提携を結び、まずは山口県下関市から森林上空を用いた「空の道」をソラシェアのプラットフォームに掲載しました。今後も森林が次々に追加され、「空の道」が構築されていく予定です。

「空の道」という言葉、とても素敵ですよね。

ソラシェアのプラットフォームで空の道がどんどんつながっていく。それによって、小口物流などのありかたを変えていきたいのです。

権利ビジネスになりますので、これからドローンの安全性能が向上するにつれて、法改正が行われるでしょう。そうなると、まずはドローンの道路交通法のようなものができるのではないかと考えられます。たとえば上空100~150メートル間をドローン専用航路として、認められたドローンのみを飛ばせるようにするというような法律ができるとか。

そうした状況下で、トルビズオンがどのようにマネタイズしていくのか。たとえば、荷物の配送でドローンを利用する場合、「ドローンの空港」が必要となってきます。私たちは、その土地所有者の権利を持っていますので、国によってドローンの空の道が決められた先は、需要に合わせてドローンポートを配置していくビジネスモデルへとシフトしていこうと考えています。

国が認めた移動領域であれば、自由にドローンを飛ばすことができるようになるのでしょうか?

おそらく、認められた事業者や個人のみがその領域を飛ばせるようになるでしょう。しかし、移動領域の下は、土地所有者の権利が明確化されていますので飛ばすことはできません。ドローンは充電や宅配の際に必ず地上に降りてくる必要がありますので、その際は土地所有者の許可を得る必要があります。

高速道路のように、もう少し自由な幅があるといいですよね。
ここは国が管理しているので許可がないと使えないけど、ここからここの間は、一般の貨物が使ってもいいみたいな。

それができたとしても、空の権利や空の資産化は、トルビズオンとしても押し出していきたいですし、ゆくゆくはドローンを使った空の空中広告が出せるようになるなど、空に投資する流れが作れたらいいなと思っています。

>>>後編へつづく

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