すでにAWSを導入している企業の導入例
物流業界では、すでにAWSを積極的に活用している企業も少なくありません。AWSではクラウドを利用した物流管理だけでなく、データ分析に特化したサービスも提供されているため、自社内で構築していたプライベートクラウド環境よりも更なる効率性の向上が見込めるようになりました。
導入した企業の一例として、従来は2週間必要としていた調達期間を1~2日程度に短縮することが可能となり、また同様のシステムを自社内で構築した場合と比較すると、およそ20%ほどのコスト削減を達成したそうです。特にデータ分析のサービスは、世の中のマーケティング動向を知るキッカケとなるため、コスト削減だけでなく新たな市場の拡大を視野に入れたビジネスを展開することが可能となりました。
中古車販売企業である「株式会社IDOM(旧株式会社ガリバーインターナショナル)」では、AWSの導入を2010年後半から積極的に検討。当時はクラウドサービスと呼ばれるものは希少な存在であり、従量課金を提示しているのはAWSのみだったため、導入事例もなく手探りの状態だったそうです。しかし、AWSは当時から利便性が優れており、また企画開発や運用方針の転換に関しても柔軟性が高いため、インフラ構築における作業がスムーズに行われました。
現在のガリバーは”クラウドファースト”の事業展開を推進しており、既存データの大半はAWSに移行。中古車業界では繁忙期と閑散期の差が大きく、このような状況にもクラウドサービスは柔軟に対応できるため、自社サーバにはない拡張と縮小を兼ねた迅速な運営を行うことが可能となりました。
また、AWSには専門のプロフェッショナルが常時待機しているため、時代の急速な進化に対応できるサポート体制が敷かれているのも大きな魅力となっています。ITスキルに長けたエンジニアが社内にいたとしても、クラウド技術のすべてを把握できるとは限らないため、こうした課題にも的確にアドバイスできるAWSコンサルタントの存在は大いに頼りになります。IT分野に人材の投入を渋る企業は多く、従来はインフラの構築に膨大な時間が必要となっていましたが、ガリバーではコンサルタントとの二人三脚により、クラウドサービス黎明期の中で優れた標準化を達成しました。
コスト削減に欠かせないサービスとなったAWS
現在では、巨大なデータ管理を行う企業にとって、自社サーバを構築することは当たり前の時代となりました。しかし、自社サーバを構築することはコスト面での負担が掛かり、また初期の導入には長期計画を想定する必要があります。他にもセキュリティ対策、拡張性なども考慮した運営を行わなければならず、これらのビジネス負荷に対して人材の配備や設備投資を苦慮しなければならない問題がありました。
AWSはクラウドコンピューティングを基本としているため、人材・設備投資などは一切不要なのが大きな魅力となっています。契約したその日から使用が可能であり、提供しているサービスの種類も30以上と非常に豊富。日本通運株式会社では、2009年からAWSによる仮想インフラの構築を行い、プール化やPDCAサイクルの確立などを通して、4年後の2013年には運用の標準化を達成しました。同社は”コンプライアンス・システム特性・基盤サービスレベル”の3つの観点から検証を行い、「全面的にクラウドへの移行は可能」という判断に達したため、コスト削減や作業の効率化に繋がるAWSのようなクラウド型管理サービスは、今後ますます注目を集めることになりそうです。
AWSだけではないクラウドサービスと物流の関係
物流に関わるクラウドサービスはAWS特有のものではなく、日立物流ソフトウェア株式会社が提供する「WMS」も、短期間・低価格でクラウドを活用した在庫管理を行うことができます。日立は国内企業とのパイプも強く、日立物流グループのノウハウを駆使した管理システム開発に努めているため、最もスタンダードな物流クラウドサービスとして各企業で活用されています。
クラウド型の管理システム開発は日立グループだけでなく、NECやヤマトグループなどの大手も手掛けており、IT企業と運送業界の垣根を超えた開発競争がここ数年でより活性化されてきました。その利便性を考えれば、将来はクラウドサービスを通した配送・倉庫管理は、物流業界で標準の仕様になると考えられるため、クラウド型の管理システム開発を専門とした企業は今後も増え続けると予想できます。