ウーバー社とスマホアプリ「UBER」
ウーバーは、2009年にアメリカ・サンフランシスコで設立されたスタートアップ企業であり、その会社が提供するアプリの名称です。
この「UBER」というアプリは、タクシードライバーとその乗客をマッチングさせてくれる新しいタクシー配車サービスであり、現在アメリカや日本を含む世界50ヵ国以上でサービスを展開しています。特にアメリカではバスやタクシーより便利なため、利用者が増えているのだとか。
「UBER」のユーザーはスマホひとつで好きな場所にタクシーを呼び出すことができ、さらに事前にクレジットカード情報を登録しておけば、料金の支払いをキャッシュレスで行うことも可能です。
ただし日本国内での対応エリアは今のところ東京だけなので、日本で普及が広まるのはまだまだこれからであると言えるでしょう。
設立直後に6億8000万ドルで買収されたオットーとは?
そんなウーバー社が買収したオットーとは、自律走行するトラックのシステムを開発するために今年設立されたばかりの、トラック向け自動運転技術のスタートアップ企業です。
その創立メンバーのなかには、グーグルの元エンジニアで自律走行車のプロジェクトにも携わっていたアンソニー・レバンドフスキ氏や、Google Mapsの開発チームを率いていたリオー・ロン氏などを筆頭に、そうそうたるメンバーが揃っています。
ふたりが在籍していたグーグルは、2020年に自動運転車を実用化することを目標にしていましたが、オットーはそれよりも早いタイミングで自動運転トラックの商業化を実現しようと動いています。
2016年5月にはすでにテスト走行を開始しており、カリフォルニア、アリゾナ、ネバダの各州の道路で、ボルボのトラックに自動運転システムを取り付けて走らせています。
実際に自動運転システムが実用化されれば、トラックドライバーは高速道路上ではハンドルを握る必要がなくなり、一般道に下りるまでの間、眠りながら休息をとることも可能になるそうです。
そんなオットーは、ウーバー社によって買収されました。その金額はおよそ6億8000万ドルにのぼるとも言われています。ウーバーはこれまで自動運転車の開発のために数億ドルもの資金を投資してきていたため、今回の買収額を合計すると、自動運転車に少なくとも10億ドル以上は投資していることになります。
ウーバーはボルボ・カーズとも提携をしている
実はこのウーバー社は、オットーの買収と同時にボルボ・カーズとの提携も発表しています。
もはや説明するまでもないかもしれませんが、ボルボはスウェーデンを本拠とした自動車製造をメインとした企業グループで、その乗用車部門であるボルボ・カーズは1998年にフォード社に買収され、現在は中国の浙江吉利控股集団傘下に置かれています。
ボルボ・カー・ジャパンの公式サイトでは、ウーバーが今回の提携を機にボルボ・カーズが製造した車両をベースとして自動運転テクノロジーの開発を行い、それが実現されればボルボ・カーズが自動運転機能を備えた次世代車として用いるとプレスリリースで発表しています。すでにピッツバーグのダウンタウンでの稼働が始まっており、しばらくは自動運転カーが配車された乗客の運賃は無料になるのだとか。
これだけ見ると事業が軌道に乗っているように見えるウーバー社ですが、実は資金状況が厳しいらしく、2016年上半期には損失額が12億7000万ドル(約1276億円)と、大赤字を記録しています。
これは2000年にアマゾン社が出した、14億ドル(約1406億円)という過去最大級の損失に近い数字となっているのですが、その内訳は「Uber」を活用しているドライバーへの補助金がほとんどなのだそうです。
このようにウーバーはビジネスでは上手くいっていても、まだ事業が軌道に乗っているとは言えないようで、中国からはすでに事業を撤退しています。中国のライドシェアリングサービスは、ディディ・チューシン(滴滴出行)という企業が最大手であり、2016年8月には同社からウーバーの中国事業を買収することが発表されています。
トラックの自動運転が一般化したらどうなるか?
自動運転車事業を手掛けるウーバーは、トラックの自動運転化を目指すオットーを買収したことによって、一般車、商業車両方の事業を同時に展開できるようになりました。
現時点ではトラックの「高速道路上のみ」の自動運転化を目指しているオットーですが、ウーバーが買収したことで、自動運転トラックの商業化のタイミングが早まることが予想されています。
そんな中アメリカのトラックドライバーたちの間では、自動運転化が実現すると機械に職を追われてしまうのではないかと懸念されています。現在アメリカには約180万人の長距離トラックドライバーがおり、トラックドライバーは学歴不問で4万ドル程度の年収を得られる唯一の職業であるため、志望者が多いのです。
トラックの運転が機械にとって代わるのはまだまだ先の話かもしれませんが、もし本当に一般道でも無人トラックが走行できるようになったら、ドライバーはどうなってしまうのでしょうか?現役のドライバーたちが不安になるのも無理はないことです。