- 石野 真吾
- 先進技術事業開発 ディレクター
- 株式会社スマートドライブ
本記事は2020年11月5日に開催されたセミナー「EV社会がモビリティ業界に起こす変化とは?」で、スマートドライブ石野が登壇した「EVシフトを後押しする “Mobility Data Platform” 」のセッションレポートです。
自己紹介
初めまして。株式会社スマートドライブの石野です。弊社からは、丸紅様やその他電力会社様、エネルギー関連企業様、メーカー様のEVに関連するサービスでご活用いただいている”Mobility Data Platform”に関して、紹介します。
私は事業開発のディレクターをしておりますが、これまでの経歴ですとSansan、アドビ、とテクノロジーを活用したセールス&マーケティングや、プロダクトマーケティングとして海外製品の日本市場展開をリードして来ました。その経験を活かし、テクノロジーを活用した大手企業様との協業や事業開発の支援をさせていただいております。
ビジネスモデル
我々は4階層で事業を提供しており、データのインプット領域、プラットフォーム領域そしてその上で行われるサービス領域、さらにはその先の利用者に向けたセールス&マーケティング領域です。一気通貫でデータを取得から展開まで取り組んでおります。
データのインプット領域
コネクテッドモビリティと言われますが、自動車やバイクをはじめ、通信機器が搭載された移動体からのデータ取得は、我々が最も注力している分野です。自動車メーカー様とも協業を進めておりますが、まだまだ市場に走っている移動体のカバレッジという意味ではコネクテッドモビリティが占める割合は少ないのが現状です。そこで、後付けできるIoT機器やセンサ類(ドライブレコーダー、温度センサ、乗降センサなど)と連携し、既販車のコネクテッド化に注力しております。
このような連携を強化できている背景は、我々自身がSmartDriveデバイスという自社デバイスのR&D・開発・量産を行いお客様に提供していることにあります。
デバイスを自社で作り、情報をサーバーに上げて処理する、という一連の作業を自社で行っておりますので、その知見を基に様々な移動体メーカーさんやデバイスメーカーさんとの連携を強化できております。
また昨今はデバイスレスで移動データを取得したい、という関心も高く、スマートフォン・スマートウォッチなどのモバイル端末から移動体の挙動というのを推定・予測するといったような技術開発も行っております。
サービス領域
この領域では取得される各種データを活用し、自社でもビジネスの展開をしております。
SmartDrive Fleet
BtoB向けの車両管理サービスで、現在約600社3万台以上の車で活用いただいており、業種業界を問わず様々な企業様でご利用いただいております。
SmartDrive Cars
BtoBtoC向けとして、不動産会社や保険会社様といった様々な企業様の裏側に入り、その企業様が提供するドライバー向けエンゲージメントサービスです。安全運転や移動距離、どこに行ったかといった移動の挙動によってポイント・クーポンに交換できるようになります。
例えば BtoB向けには福利厚生サービスとして提供したり、コネクティッドカーのサービスの裏側として提供させていただいたりしています。
SmartDrive Families
高齢者向けの事故防止を行うためのサービスで、危険運転をすると息子さんや娘さんにアラートの通知が来んで行ったり、指定した範囲から出ると通知が来たりすることで、運転の見守りを行うことができるものになります。また、よく行くスーパーの駐車場に入ると通知を飛ばす等することで、家族間のコミュニケーション促進としてもご利用頂いているようなサービスです。
プラットフォーム領域
上記3つのサービス基盤としても使っているのが、Mobility Data Platformです。そしてこのプラットフォーム自体についても企業様に提供させて頂いており、本日はその事例について少し深く紹介していきたいと思います。
「CASEの大変革」への対応にスピードが求められてきている昨今ですが、加えてコロナによって新規事業への投資というのも、不確実性の回避や低減がポイントになってきております。
不確実性が多い中で、いかにスピードを持ってトライしていくかというのは非常に重要で、単一メーカーさんや企業様がデータを取得し保持してきたものを、オープンにコラボレーションを促進しながら利活用していくのが大切です。このような背景の中で、各社のモビリティサービスのデータ利活用を支援する基盤として、また、各社様のインフラの一部としても利用いただける、Mobility Data Platformというサービスを提供しております。
一言でデータ活用といっても、様々なステップでデータの活用というのは進んでいきます。
弊社でも実際に自社の事業として移動データの利活用を行っていますが、自前でゼロからを行っていくというのは金額、時間、人の面でコストがかかってきます。
一方で、この不確実性のある世の中ではQuick Winが求められておりますので、弊社では自社でこれまで培ってきたノウハウと合わせ、サービスの基盤になるデータウェアハウス、アナリティクス機能、移動データを意味づけしたり可視化するような機能、それらを企業様に提供してお客様の事業成長を支援しております。
データの利活用には自社で取得した1st Partyの移動データだけではなく、統計情報としての3rd Partyデータなど、さまざまなデータの統合・組み合わせた活用がカギとなってきます。直近ではソラコムさんやナイトレイさんといったようなテクノロジー企業とも先んじて連携し、実際にモビリティサービスを提供する企業様が連携をイチからやらなくても済むように、我々のほうで連携を強化しております。
データは統合したり蓄積したりすること自体に価値があるのではなく、そのデータからどういうインサイトが得られるか、そのデータを活用してエンドユーザーに対してどのような価値を提供できるのかが重要です。まさにこういう目的を達成するためのご支援をMobility Data Platformを通して行っております。
Mobility Data Platformを活用した事業共創
スマートドライブの事業開発はパートナー様と共に様々なソリューションを構築し、企業様へ提案活動も一緒に行っております。本日ご参加頂いた方々の中には、自社でモビリティサービスをやられている企業様や、モビリティサービスの裏側を支援するような部品・テクノロジーをご提供されている企業様もいらっしゃると思います。そういった皆様とパートナーシップを結び、モビリティサービスの進化に貢献していこうと思っています。
ソラコム
移動データの扱いを得意とする我々のMobility Data Platformと、あらゆるIoTデバイスにつながるソラコムさんのプラットフォームを連携することによって、多種多様なIoTデータをデータ統合・可視化して利活用していける環境の構築ができるようになります。こうした連携を通じて、電力データの統合でも活用いただけるのではないかと思っております。
丸紅
セミナー前段でのお話の通りとなりますが、これまで我々が培ってきたフリートマネジメントサービスの知見や、Mobility Data Platform、アナリティクスの基盤を活用し、法人におけるEVシフトを加速させるような取組みを一緒に行なっています。
HONDA
HONDA社が提供するHonda FLEET MANAGEMENTという二輪向けのサービス構築やサービス展開についてご支援させていただいており、バイク本体からのデータ収集、分析、サービス化という一連でご支援しております。
出光
モビリティサービスを使った、toC向けのサービスの支援事例です。飛騨高山や千葉館山市・南房総市にて展開している超小型EVを活用したカーシェアリング事業の裏側にMobility Data Platformを活用いただいております。モビリティサービスを新しく作る場合、車両の稼働率やサービス提供のUXに課題を持たれるケースが多いのですが、この取組みでは会員登録からサービスの利用に至るまで、移動データの統合を通してサービスの継続的な改善が出来る環境提供を行っております。
また、この取組みの中で出光様の課題に則り、他のテクノロジー企業様との連携も強化しました。ナイトレイさんがお持ちのSNSに投稿されている内容・地点の解析情報と、実際のカーシェアリングの走行履歴とを重ねることによって、まだ広く知られていない観光地の発掘等を行えるようにしています。
EV車における活用とは
では最後に、EV関連業界の中で我々のプラットフォームがどのように活用できるのかということをご紹介します。
スマートドライブが提供するMobility Data Platformには、データウェアハウス機能、アナリティクス機能があります。移動データだけではなく、充電量のデータや予約のデータ、売上データなどを統合して可視化したり、そこに意味づけをしてサービスで利活用をいただけるようなデータ基盤、 API、アナリティクス基盤を提供しております。
例えば、EVにおいては電力利用量の可視化が課題になってきますが、チャージスポットや自宅や事業所での電力データをシームレスにプラットフォームにつなぎ、可視化するこも出来ます。さらに、電力データに移動データを掛け合わせることによって、電費や電気の使用量の予測も出来るようになっております。
また、法人の車両予約・管理機能であったり、そこに付随する機能を我々も持っております。これらの機能と連携をすることで、配車最適化や予約ブロックといった機能開発の一部についてもご支援させていただいております。
他にも、 アナリティクス機能を使うと、GPSデータから走行情報として加工し、どういう走行をして、どこにどれくらい滞在しているのか、ということが分かります。さらに滞在地点の情報を付与することによって、実際にどういう場所に誰が何時間行ってきたのかを集計したり統合することができます。
そうして出た結果によって、どこにチャージスポットを作るとより利便性が高まるのか、という分析も可能となります。
モビリティサービスをこれから立ち上げられる企業様や、データは取得できているけれども価値提供まで至ってない企業様、移動データが取れてるけれども電力データが取れてないお客様、または電力データが取れてるけども移動データの利活用ができていないお客様、こういった企業様とぜひこれから具体的なディスカッションを行っていければと思っておりますので、気軽にお問い合わせいただければ幸いです
EV車はまだまだ不便な点があったりコストがかかるような状況です。EVシフトを進めていくためには、競争ではなく共創を一緒に行ない、利便性の高い社会の実現に向けて我々も一緒に取り組みを進めていければと思っております。
以上でスマートドライブからの講演は終了いたします。ありがとうございました。